新社長が前任社長を否定する会社は崩壊する 否定の悪循環が止まらなくなってしまう

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2000年経っても、2600年を経ても、そこから、それぞれの分派が生まれていますが、今もなお、消滅することなくそれぞれの歴史を刻んでいるのは、いつも、誰もがキリストや釈迦から「出発」しているからだと思います。

会社経営では、どうすればいいのか悩むことがあります。自分なりの結論を出し、周囲の人、部下の人たちに意見を求めるということをしても、なお悩む。社長が孤独を感じるのは、まさにそのときです。そういうとき、社長が拠りどころにするもの、いわば「経営の戻り場所」があることは非常に大切なことです。ですから社長たる人が迷い悩むときには、その都度「経営の戻り場所」に立ち返ってみる。そのことによって自信をもって自分の方針を打ち出すことができるのです。

「経営の戻り場所」とは?

では、「経営の戻り場所」はなにか。それは創業者の掲げていた理念です。あるいは前任者の心、思いというものです。創業者は、どういった理念、どのような願いでこの会社を創ったのだろうか。前任者は、いったいどのような思いを持ちながら経営していたのだろうか。その理念、願い、思いに立ち返ることによって、会社を継続的に一層発展させることができるのです。

「時代が違う。いまはグローバル化の時代だ。そのような過去はいっさい役に立たない。新しい経営はオレから始まる。社員は、過去のすべて、創業者のこと、前任者のことなど忘れてほしい。これからは、オレの言うことだけ、指示だけで考えて動け」。そういう「創業者、前任者の否定」を主張する経営者も出てきていますが、その経営者は、確実に次の社長に否定されます。「いや、そんなことは承知のうえ。次のヤツは、オレを否定してくれていいんだ」と言うかもしれません。そのように考える社長は、それはそれでご自由におやりいただければいいと思います。

ただ、会社が継続していくためには何代目であろうと、経営に迷い悩むものです。しかし、その「経営の戻り場所」がないと、その都度バラバラなことになります。その時々の社長によって異なってくるのです。異なってくれば、なにがなんだかわからなくなるのは社員です。なにを基準に、なにを定点として仕事に取り組んでいけばいいのかがわからない。創業者の考え、前任者の思いによって仕事をしていたのに「その考えはダメ。前任者の言っていたことは捨てろ、これからはオレの言うことをきけ」となると、ただただ社員は右往左往するばかりです。そしてそのうちに会社は衰退ということになるでしょう。

もちろん、創業者のその折々の言葉、前任者が指示していたすべてそのものを肯定すべきだということではありませんし、そのようなことをすれば衰退して倒産することは必至です。時代が超高速で進んでいる今日において、なんでもかんでも創業者、前任者を肯定するのは明らかに間違い。しかし、その経営に対する理念、願い、前任者の思いは「普遍として位置づける」。そのことが「経営の戻り場所」になるのです。

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