首都大学東京

「持続可能な生態系」の実現を目指して 中規模総合大学の強みを生かした「挑戦」とは

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沼田教授は、自然との触れ合いなどを取りいれた観光手法「自然ツーリズム」の研究が専門。そこに生態学などの知見を加え、自然保護と観光を両立させるべく研究を進めているという。

「私は今、マレーシアから自然と農村が残る地域の観光開発を依頼されていますが、里山的な生物の保全を観光に転換するプランを提案しようと考えています。観光振興において最も大事なのは、あくまでも自然保護と両立させ、地域社会と生態系を維持することなのです」

恵まれた研究環境で目指す「エコツーリズムの体系化」

持続可能な生態系の実現は、可知教授と沼田教授に共通するテーマだ。そのためには人材育成が重要で、出口の一つとして観光が軸になるという認識も、両教授は共有している。

「生態系の維持という目標に近づくためには、定義があいまいなまま使われている『エコツーリズム』という概念を、学術的な知見に基づいて体系化し広く共有する必要があります」と、沼田教授は強調する。

画像を拡大自然を利用した観光を振興するためにはツーリズム、地域社会、そして生態系のバランスを見極め、持続可能となる条件を見出すことが不可欠である

こうした研究は、多様な分野の専門家が連携して行うことが望ましい。その点で首都大学東京は「恵まれた環境にある」と、可知教授が指摘する。

「本学は中規模大学であるため小回りが利きますし、研究者がフランクに直接対話できます。そのうえ、総合大学としてさまざまな分野の研究者が揃っていますし、学内の『総合研究推進機構 URA室』という組織が研究を支援してくれています」

もちろん、多様な分野の研究者が直接話し合える環境は、学生にも良い影響をもたらすはずだ。実際、可知教授も沼田教授も「本学は教員同士も、教員と学生も顔が分かる規模です。教員と学生の距離感も小さく、直接話す機会が多く用意されている」と、口を揃える。

世界各地の美しい自然を保護しながら、無理なく生態系を利用するにはどうすればいいか、観光はその方策の一つになり得るのか。首都大学東京が取り組む研究は、今後ますます重要性を増し、注目と期待を高めていくに違いない。

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