首都大学東京

「持続可能な生態系」の実現を目指して 中規模総合大学の強みを生かした「挑戦」とは

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かつては離島ブームで賑わった伊豆大島だが、近年は観光客が減ってしまった。以前から教養科目の学外体験授業で訪れるなど密接な関係を築いてきたこと、教育に最適な規模の島であることなどから、東京都が設置した公立の総合大学として島の振興に貢献したいと考え実施に至った。

首都大学東京の小笠原研究施設(父島)。大学が持つ唯一の研究拠点として、学内外の多くの研究者の研究を、半世紀近くにわたり支えてきた

「本学に蓄積のある現場型アクティブラーニングの経験を活用した、社会人教育の一環です。観光ビジネス単体では浮き沈みが激しいので、収入源の柱とするにはリスクが高いと考えた結果、『新6次産業』にたどり着きました。昨年は4回の講座を開き、事業提案ができるレベルまで到達しました。今年度は『あんど!大島2』として、財政面も考慮した具体的な事業化を視野に入れた講座を開く予定です」(可知教授)

地域への直接的な貢献もミッションの一つ

さらに首都大学東京は、人材育成を目的の一つとして「地域共創科学研究センター」を稼動させている。同大都市環境科学研究科観光科学域の沼田真也教授は、センターの概要をこう説明する。

沼田 真也
/都市環境科学研究科
観光科学域 教授

「いろいろな分野の研究者が参画し、地域への直接的な貢献をミッションとして取り組んでいます。たとえば『TAMA NEXTファーマーズ プログラム』という東京都多摩地域の農業後継者塾では、地域の信用金庫と連携し、経営のセンスを持った次世代の農業経営者を育成しています。自治体職員のスキルアップを図る『地域創生スクール』では、自治体職員による科学的根拠に基づいた地域創生事業の実施などを目指し、データ解析技術などのスキルを付けられるプログラムが用意されています。また生態学の観点としては、今後『生物多様性スクール』を立ち上げて、自治体を支援することも考えています。自治体は生物多様性基本法により生物多様性地域戦略の策定を努力義務とされています。しかしデータの蓄積もなく、手の付けどころがわからないというのが実情なのです。」

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