「殿ご乱心!」安倍首相の言動に揺れる永田町 自民が都議選で惨敗なら、2007年の悪夢も

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こうした状況下、政府・自民党内で「都議選の投票率が上がれば、自民惨敗の可能性もある」との不安が広がる中、首相を支える有力幹部からは首相の体調を懸念する声も出始めている。

加計学園疑惑に関する文科省文書の再調査を余儀なくされた6月9日の深夜、首相私邸に急きょ医師団が集まった、との情報が飛び交った。首相側近は数人の担当医師が駆け付けたことを認め、「五十肩が悪化したため」と説明したが、永田町では「持病の潰瘍性大腸炎の再発では」とのうわさが駆け巡った。さらに翌10日、安倍首相が行きつけのスポーツクラブに3時間近くこもったことが「精密検査を受けた?」との疑心暗鬼を拡大させた。

首相が「国民の批判は真摯に受け止める。信なくば立たずだ」と殊勝な態度をみせた6月19日の会見と並行して、二階俊博幹事長が「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官と密談したとの情報も自民党内で注目されている。青木氏と二階氏は旧田中派(経世会・現額賀派)の元幹部同士で、麻生財務相が進める「大宏池会構想」に対抗する「大経世会構想」を話し合ったのでは、との見方が広がった。これに関連して「自民最高幹部が『こんな状況が続けば安倍政権は秋には行き倒れになる』と語った」との"怪情報"も流れるなど「安倍1強政権の足元が揺らいでいる」(自民長老)ことを裏書きするような自民党内の動きが相次いでいる。

「時間がない」から、生き急ぐのでは?

5年前の夏、安倍首相が自民党総裁選挙への再出馬を決断した際、「ここは自重して、次の総裁選で再起を図ってはどうか」といさめる党長老に対し、首相は「私には時間がないんです」と語ったとされる。新安全保障法制や特定秘密保護法、そして今回の「共謀罪」法と「安倍改憲」への挑戦――。再登板後、性急で強引とも見える政権運営を続けていることの背景には、「自らの体調不安があるのでは」(首相経験者)とのうがった見方もある。

首相は9月21日で63歳となる。病で首相の座に届かなかった父・晋太郎氏がすい臓がんを発症した年齢だ。父親の闘病と失意を秘書として目の当たりにした首相だけに「自らの体調と父親の病気を二重写しにしている。だから生き急ぐのでは」との見方もある。目前に迫った都議選での自民惨敗で政権が揺れる事態となれば「持病の悪化で退陣を余儀なくされた10年前の悪夢がよみがえりかねない」(自民長老)との不安もささやかれる。

このため、ここに来ての早期内閣改造や改憲スケジュールの前倒しも含む首相の一連の言動を、「終わりの始まりでは」(自民若手)と受け取る向きも出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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