「殿ご乱心!」安倍首相の言動に揺れる永田町 自民が都議選で惨敗なら、2007年の悪夢も

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ただ、こうした騒ぎも6月23日午後以降はテレビ各局のニュースや情報番組ではほとんど取り上げられない状態となった。人気歌舞伎役者の市川海老蔵氏の妻で元フリーアナウンサーの小林麻央さんが22日夜に死去したためだ。23日朝に海老蔵氏が自らのブログに「人生で一番泣いた日」と書き込んだことでマスコミは大騒ぎとなり、海老蔵氏が23日午後の緊急会見で「(妻は)『愛してる』と言って旅立ちました」と涙で語った場面を中心にNHKまでが「国民的悲報」として大々的に伝えたからだ。

こうした状況に、普通なら情報番組がこぞって大きく取り上げるはずの前川氏の会見や豊田氏の秘書暴行事件がほぼ画面から消え、「首相にはまだツキが残っている」(自民長老)との声も広がった。

永田町では「今年の流行語大賞の本命は『忖度(そんたく)』」との見方が定着していたが、前川氏の「あったものをなかったことにはできない」に加え、海老蔵氏の「『愛してる』と言って旅立ちました」も有力候補になるとの声もある。ただ、「もし、『忖度』が大賞に選ばれたら、いったい誰が受賞者になるのか」との笑い話も含めて、首相を中心とする自民党政治家たちの異様な言動が国民の政治不信をかき立てていることは否定しようがない。

「泣きっ面に蜂」、稲田氏がまた無知を露呈

安倍首相は週明けの6月26日、ようやく都議選の応援に入った。ただ、4年前の都議選と違い、「屋内での演説会」での登壇にとどまり、街頭演説は避けた。「街頭に立つと、首相の応援演説に聴衆から"加計隠し"などのヤジが集中しかねない」(周辺)ことを懸念したからだという。苦戦を強いられている現職の自民党都議からは「首相が来てくれても、逆効果になりかねない」との不安の声も聞かれる。

党執行部は人気者の小泉進次郎衆院議員を「応援団長」に指名して局面打開に躍起だが、27日には稲田朋美防衛相が都議選応援の中で「自衛隊としても(自民支持を)お願いしたい」と発言して批判された。自衛隊員が政治的行為を制限されていることを無視するもので、またしても「無知で不用意な発言」(自民幹部)だ。稲田氏は同夜、発言を撤回したが野党は辞任要求で勢いづき、自民都連は「泣きっ面に蜂だ」とうなだれた。

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