米学生の死で北朝鮮に報復するのは間違いだ トランプ政権が取るべき対策はほかにある

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しかしながら北朝鮮の問題は、通常の状態を通常の外交手続きに従って議論しているのではないというところにある。北朝鮮の政治的リーダーシップは、「正しい」「間違っている」といった道徳的価値観に基づいていない。だからこそ、トンラプ政権が何かを行うことで、今回のワームビアの死という悲劇を、地域的な大騒動に変えてしまう可能性に注意しなければならない。

ワームビアの疑わしい死への報復として、トランプ政権がすべきことは全漸進的かつ効果的な対策をとることである。こうした対策は、金正恩の体制に責任を取らせるという厳しい警告になるだけでなく、北朝鮮を暴力や分別のない反応を防ぐことも期待できる。

米国人の北朝鮮への渡航を禁止に

では、トランプ政権が取るべき、いや、取らなければならないいくつかの対策とは何だろうか。最も「当然」であり、すでに立法関係者が動き始めている政策は、米国人による北朝鮮への渡航を禁止することである。

国務省はすでに、米国人に対して繰り返し北朝鮮への旅行を控えるよう警告しているが、それはいかなる法律上の重みも持たない。実際、ワームビアが解放されたのと同じ頃、元プロバスケットボールのスター選手、デニス・ロッドマンが北朝鮮を訪れている。

ホワイトハウスには、国務省によるこうした「警告」を強制力のある法令にかえる権利を有している。トランプ大統領が自らの大統領権限を行使するか、財務省による観光に関する認可を禁じることを目的とした、下院超党派の議案を支持すればいいのだ。

北朝鮮が理解しなければならないのは、同国政府が勝手に米国人を拘束したり、訴追したりしている間は、毎年数百人の米国訪問者から得ていた利益がなくなるということだ。さらに、現在拘留されている3人の米国人を直ちに米国の保護下へ移すことである。

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