ロールス・ロイスの真価問う14億円の高級車 顧客の要望に応じて1台を手作り

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さらにサプライズがあった。ラグジュアリーカーの頂点とも言うべきロールス・ロイスのニューモデル「スウェプテイル」がこの場でデビューしたのだ。実はロールス・ロイスは今、BMWグループに属している。ちなみに混乱しそうだが、もう一方の超高級車の雄ともいえるベントレーはVWグループに属する。

顧客の注文に応じて限定の1台がつくられるワンオフカーだ

「このクルマは私たちの特別な顧客の為に作りました」。ロールス・ロイス・モーター・カーズCEOのトルステン・ミュラー・エトヴェシュが述べるように、このクルマは普通のロールス・ロイスではない。顧客の注文に応じて限定の1台がつくられるワンオフカーなのだ。「コーチビルド・モデル」とも呼ばれる。

発注したオーナーがヨットマニアであったことから、各所にヨットを思わせるモチーフが見られる2座のクーペであり、ロールス・ロイスのフラッグシップモデルの「ファントム・クーペ」をベースに手作りで完成させる。

多くのコーチビルド・モデルを作ってきた

「スウェプテイル」内部

かつて馬車の客室部=コーチは、顧客の注文に応じて作られた。ロールス・ロイスは、その伝統を受け継ぎ多くのコーチビルド・モデルを作ってきた。その伝統をこのスウェプテイルは受け継いでいる。プランの始まりから完成まで4年間を要したというこのモデルの価格が14億円と言われている。自動車の基準を超える驚くべき価格であり、まさに世界最高価格の乗用車であることは間違いない。

スウェプテイルのこれは、ロールス・ロイスがワンオフカービジネスに再参入を表明したことを意味する。かつては多くのワンオフ・モデルやカロッツェリアとのコラボレーション(イタリアのコーチビルド・メーカー)などから個性的なモデルを生み出したロールス・ロイスも近年は表向き、こういったワンオフ・モデルは製作せず、内外装を顧客の趣味でカスタマイズする「ビスポーク」スタイルの提案を行っていた。

かつての自動車はフレームとボディが独立した構造だったが、自動車の進化によってそれらが一体化したモノコックボディ構造(完全ではないにせよ)になったため、単純にボディだけを加工するのは難しくなった。1台のみクルマを公道で走らせる為の型式認証には、衝突安全性の担保や環境対応に莫大なコストが掛かる。そして何より少量生産を行うコストが増大し、そこそこ高価な金額で販売しても割に合わなくなってしまった。

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