SNS対策?若者が「透明グッズ」にハマる理由 「盛る」風潮の後にやってきたブーム

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その際に、より自分だけのオンリーワンの物として見せるため、“透明”というキャンバスが利用され始めたのではないだろうか。そして、そこで自分らしさを全面に出すことで、“中身で周りとの差別化”を図る若者が増えたのだと考える。

また、透明グッズだと自身で好きなようにコーディネートできるため、1つあれば何通りもの魅せ方ができる。服装などに合わせて何種類も買うより、コストパフォーマンスが高い。そこも不景気の時代を生きてきた若者の感覚にすんなりなじむ。

神奈川の高校に通うIさんも、透明のプラスチックペンケースをシールなどで装飾して使用している。クラスの女子の多くも同じ透明のペンケースを持ち、自分で装飾してオンリーワンのペンケースにしているという。

高価で名の知れたブランドよりも、透明のキャンバスを利用して“オンリーワン価値“を置く若者が増えてきたのだ。

原田の総評:他のジャンルにも今後広がる?

今の若者たちの「透明ニーズ」についての分析はいかがでしたでしょうか?

高級ブランド品を所有していること自体に喜びを感じ、周りにそれを見てほしいと考える若者が少なからずいたバブルの頃に対し、今の若者たちは不景気感の中を育ってきたとはいえ、生活のベースは昔の若者たちよりも全体的にはるかに豊かで、だから昔の若者と比べ、高級ブランド品の所有やそれらをひけらかすこと自体に喜びをあまり感じなくなってきているのではないでしょうか。

代わりに「自分らしい」小物をそろえ、それらの総体としての”自分の世界観”を周りの友達に「センスのよいもの」と認識してもらいたいというニーズが高まっており、それを満たしてくれるのが「透明グッズ」のようです。

これだけ若者の間で「透明ニーズ」が高まってくると、もっとほかのジャンルにも透明化が広がってくる可能性が大いにあります。読者の皆さまの業界・会社でも「もし弊社商品を透明にしたら、若者たちのニーズは満たせるのだろうか?」と一度会議の議題に上げてもいいかもしれませんね。

ただし、ただ透明にすればいいわけではなく、「その中身」で若者たちが「自分の個性」を周りにアピールできることが重要ですから、そこをどうかお忘れなく!

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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