東芝半導体売却、日米韓連合にきしみが発生 最終合意に向けて火種が残る可能性がある

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6月26日、東芝が半導体子会社売却の優先交渉先として選んだ「日米韓連合」が、最終合意の直前できしみを生じている。写真は3月、都内で撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)

[東京 26日 ロイター] - 東芝が半導体子会社売却の優先交渉先として選んだ「日米韓連合」が、最終合意の直前できしみを生じている。東芝は定時株主総会を開く28日までに同連合と株式譲渡の正式契約を結ぶ予定だが、同連合に加わるSKハイニックスに対し社内に警戒感が浮上しているのに加え、連合各社の間で出資契約がまだ詰め切れていない。

一方、半導体事業の合弁パートナーである米ウエスタンデジタル(WD)は26日、東芝に送った書簡の中で、連合にハイニックスが参加していることに「深刻な懸念」を表明した。東芝側と日米韓連合との最終合意が実現しても、今後の展開は流動的で、同連合を主導した経済産業省の調整の甘さが問われる事態を懸念する見方もある。

東芝は21日、半導体子会社の売却先として、政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、米系ファンドのベインキャピタルが出資する陣営に優先交渉権を与えると発表した。同陣営には、韓国半導体大手のSKハイニックスも加わり、ベインによる8500億円の出資に対して、4000億円の融資を付ける。

関係者によると、経産省の主導で出来上がった同連合は、ハイニックスをベインへの融資という間接的な参画に留めることで、技術流失を防ぐ仕組みに仕立て上げたのがポイントだ。

ハイニックスへの警戒感

しかし、東芝役員の中には、ここに来てハイニックスに対する警戒感が広がっているという。ハイニックスが東芝の半導体技術を不正に入手したとして、東芝が2014年に損害賠償を求める訴えを起こしたことがあるからだ。関係者は「因縁の関係が急に意識され始めた」と明かす。

さらに正式契約までの期限が2日後に迫っているにもかかわらず、出資の枠組みが固めきれていない実情もある。今回の出資スキームは、革新機構と政投銀が3000億円ずつ出資し議決権の3分2を握る一方で、ベインは出資額は多いものの、優先株を多くすることで議決権の保有割合を3分の1に抑えることになっている。しかし、「各出資者の条件が違う上に、条件そのものが詰め切れていない状況」(関係者)という。

一方、WDは同事業の売却が合弁契約に違反しているとして国際的な調停機関に差し止めの仲裁を求めており、仲裁判断が出るまでの措置として米カリフォルニア州の上級裁判所にも同様の訴えを起こしている。

東芝にとって、この訴訟リスクは依然として解消されておらず、関係者の中には、WDがすでに出している妥協案を再修正すれば検討の余地はあるとの見方もあり、陣営を再度組み直す可能性も無くなったわけではなさそうだ。

(布施太郎、山崎牧子、浜田健太郎 編集:北松克朗)

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