「食べログ」レビュアー騒動で真の問題は何か 有名レビュアー「口コミ」の影響力と信頼性

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つまり、インフルエンサーが何らかのメッセージを発信すると、彼、彼女らを取り巻く人々である「フォロワー」がその情報や評価を拡散する流れが発生する。代表的なところでは、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSで、インフルエンサーの投稿に対して、賛意を示す「いいね」ボタンを押す行為などがそうだ。

食べログでは、「うどんが主食」氏のような有名レビュアーがインフルエンサーに当たる。食べログは店選びで「自分と好みが合う人から探す」ことを推奨し、「好みのあう人をフォローすると、その人のオススメのお店から探せます」と好みのレビュアーから情報を得るようにアプリやサイト内で誘引している。これが、有名レビュアーが道先案内人のインフルエンサーになる仕組みだ。

インフルエンサーを取り巻くフォロワーは、嗜好性が近い集団を形成。インフルエンサーが口コミ投稿をすると、フォロワーも同じような評価をする傾向を見せる。

「有名レビュアー」の評価が波及するワケ

有力なインフルエンサーが、ある飲食店を高く評価していると、フォロワーはその店を選ぶ可能性が高まるし、食事の後の店の評価にも影響を与える。つまり、インフルエンサーの虜(とりこ)となっているフォロワーは、その後に追随して低い評価がつけづらくなり、どうしても同等の高い点をつけてしまいがちだ。

飲食店側からしてみると、1人の有名レビュアーの後ろにいる大人数のフォロワーが、真のターゲットになっているとも言える。

今回の食べログのケースでは何が問題だったのか。それは、有名レビュアーによるインフルエンサーマーケティングが展開されていた中に、実は広告や宣伝であることを悟られないように隠れて行う、ステルスマーケティング(ステマ)が混じっていたのではないか、という疑問が生じたことである。

ステルスマーケティングとインフルエンサーマーケティングには、明確な違いがある。インフルエンサーマーケティングのほうは、インフルエンサーが宣伝を行うにしても、隠れて行うことはしない場合を指すので、その点が異なっているのだ。

食べログは、多くの一般ユーザーがレビュアーとして、店の評価を書き込むことでメディアを形成している。これは、サービスを利用するユーザーがコンテンツを作る「ユーザー生成コンテンツ(UGC)」という種類のネットサービスで、動画サービスの「YouTube」などと同じ構造だ。

このようなユーザー生成コンテンツと総称されるサービスの場合、広くユーザーからコンテンツを集められる一方で、本質的に運営企業のコントロールが難しく、レビューなどが玉石混淆になってしまいがちなところがある。

食べログの場合、表示される飲食店の「点数」はサイトの「点数・ランキングについて」に明記されているように、「食べ歩きの経験が豊富な方の影響を大きくするという考えのもと設計」されている。すべてのレビューの単純平均ではなく、「影響度を持つユーザーからのより多くの高い評価が集まることで点数が上がる仕組み」をとっている。

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