カルビー、株主の関心はポテチではなかった 「フルグラ」で中国市場にリベンジ

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「フルグラ」は原則、国内のみで展開してきたが、実は中国ですでにブランドが根付きはじめている。国内で販売したフルグラの2割以上が、業者を通じて中国に輸出されているという推計値がある。

また中国ではパッケージが似通ったフルグラの模倣品も流通している。「偽物を作っていただいているということは、それだけ評判がいいんだと楽観的に思っている」(松本会長)。

日本で生産し”越境EC”で展開

こうした状況を是正する狙いもあり、カルビーは今年5月に中国の電子商取引最大手のアリババ・グループとの提携を発表。8月からアリババが運営するECサイト「天猫国際(Tmall Global)」でフルグラの正規販売を始める。

メイドインジャパン製品の人気の高さから、当面は日本で生産する。フルグラの生産は労務費などの製造経費が低いため、製造地によって利益率は大きく変わらないという。

北海道に20億円、京都に70億円を投じ、両工場で生産を開始。北海道工場は今年8月に稼働予定だ。「独身の日」と呼ばれ、中国のネット通販で大規模セールが行われる11月11日に向けて、拡販体制を整える。

海外事業に対する株主の関心が高かった(記者撮影)

期待が集まる中国事業だが、懸念を訴える株主もいた。フルグラは今年3月に中国のテレビ局CCTVで「製造地表示に問題がある」と批判された。松本会長は「報道された商品はカルビーが直接販売したものではない。これからは自分たちの手で良いものを輸出してビジネスを展開していく」と答えた。

カルビーは中国で苦い経験がある。2012年8月に香港上場の食品メーカー・カンシーフと伊藤忠商事との間で合弁会社を設立し「じゃがビー」などの自社製品を製造販売したが、2015年9月には合弁契約を解消している。合弁会社でうまく事業を制御できなかったことが敗因だという。

松本会長は当初、中国事業の再構築は2018年度ごろになるとの見通しを示していた。予定より1年早いリベンジだが、今回は合弁ではなく直接販売できる体制をとる。

質疑応答の終盤では、「中国を越えてインドまでさらなる市場の開拓はしないのか」と尋ねた鼻息の荒い株主もいた。松本会長は「インドでは販売価格を相当安くしなければならない。まず中国を平らげてから」と中国事業を主軸に据える姿勢を改めて示した。

2016年度のフルグラの売上高は291億円だった。将来的に国内で500億円、海外で1000億円規模のブランドにすることを目指す。中国でフルグラ販売を成功させ、株主の期待に応えられるか。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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