日経新聞が記者に夜回り制限令を出した理由 スクープを狙うよりも今は残業抑制が優先だ

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日経では数年前にも社内で働き方改革の試みがあり、「ノー残業デー」を制定するなどしたが、編集局では浸透しなかった。だが今回は違うようだ。編集局幹部は「これはポーズではない。目安箱を設けるので、残業削減のための良いアイディアをどんどん寄せてほしい」と局員に述べた。長谷部専務も、局員を前に「残業抑制へ締め切り重視を徹底する。特ダネを連発する記者でも、締め切りが守れなければマイナス評価」と、人事評価に言及し、本気度を見せた。

これまで特ダネは他紙が追いつけないように、朝刊の最終版として深夜ギリギリまで差し替えられ、都市部を中心に届けられる「14版」だけに入れることがあったが、原則禁止。14版で変更するのは1面と天変地異対応がある社会面や最新展開が必要なスポーツ面のみで、ほかは最終版よりも〆切が早く、主には大都市近郊向けとして印刷する13版で完結する。そうすれば編集作業が午後11時前後に終わり、多くの記者が終電前に帰れるようになる。

新卒採用への逆風に抗しきれない

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ここまで真剣な理由は、新卒採用への逆風が強いためだ。そもそもマスコミ業界志望の学生が激減している上に、日経でも内定者が働き方への不安を口にして入社を辞退するケースが、会社の想定を上回っているという。「中途も通年採用でどんどん採っているが、純血主義が強い会社なのであまり定着しない」(日経社員)。

英フィナンシャル・タイムズを買収したこともあり、インターネットの電子版を優先する「デジタルファースト」が徹底され始めたことも深夜に集中しない働き方に一役買っているようだ。

なお朝日と同じく日経も、今年5月30日付で労基署から是正勧告を受けている。対象は編集局以外の裁量労働ではない職場で、労使協定で定めた残業時間を超過していたためだとされる。

東洋経済 メディア取材班
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