セブンとイオンが築けない「ネットで稼ぐ力」 この牛歩ではアマゾン防御壁さえつくれない

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セブンとイオン、流通2強が苦悩しています(写真は記者撮影)

日本上陸から17年目。アマゾンの膨張が止まらない。2016年12月期、日本での売上高は約1.2兆円に達し、年2割ペースでの増収を続けている。年1割前後で伸びている日本のコマース市場を上回る驚異的な速度で成長している。

週刊東洋経済は6月24日号で「アマゾン膨張」を特集。eコマースの巨人であるアマゾンが日本や米国で構想する戦略のほか、翻弄される日本企業の動向を追った。アマゾンにまるで歯が立たず、ネット拡大戦略が不発しているのが流通2強のセブン&アイ・ホールディングスとイオングループだ。

オムニチャネル戦略は出口のない迷路をさまよう

「オムニチャネルがきちんとできれば、小売業として日本でトップ、世界でも何番目という形で成長していくと思う」。昨年5月、セブン&アイの経営を長年担ってきた鈴木敏文会長(現・名誉顧問)は、最後の株主総会の場でそう述べた。あれから1年。セブン&アイのオムニ戦略は出口のない迷路をさまよい続けている。

週刊東洋経済6月24日号(19日発売)の特集は「アマゾン膨張」(全44ページ)です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「リアル店舗とネット通販の融合」をうたい文句に、グループの通販サイトを結集し、「omni7(オムニセブン)」を立ち上げたのは2015年11月。同時に、2018年度に売上高1兆円という目標をブチ上げた。事業を統括していた鈴木敏文氏の二男・康弘氏(2016年末で辞任)は「今さらアマゾンのようなことをするつもりはない。当社のベースはセブン‐イレブンに代表されるリアルの小売業。全国1万8000店、40万人の販売員(当時)を媒介としてネットとつながる」と語っていた。だが2016年度のオムニセブンの売上高は976億円にとどまる。

そして、昨年10月のセブン&アイの決算会見で、井阪隆一社長は「アマゾンや楽天などの専業各社が林立する中、不特定多数の顧客にアプローチしてきたことや、(顧客よりも)システム起点で進めてきたことが失敗の要因」と述べ、オムニ戦略の仕切り直しを宣言した。

新たな戦略では、グループ各社共通のIDを導入し、購買情報の一元管理を通じてそれぞれの顧客の属性に応じたマーケティングを行う。そのため、スマートフォン用アプリの開発に着手した。

次ページだが、いきなりつまずく
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