ボローニャ紀行 井上ひさし著

ボローニャ紀行 井上ひさし著

著者あこがれの地ボローニャは、イタリアにあってもとりわけ個性的な町である。机上のボローニャ研究を重ねて30年、初めて訪れた古都での丹念な取材、そして期待どおりの「再会」、予想もしなかった現実との遭遇。手練(てだれ)の作家による報告はユーモアを交え軽妙快調に進む。

とはいっても、観光案内風エッセイではない。いいかげんだがしぶといイタリアという国、家族や近隣やスポーツ、文化を国家の上に置くボローニャという町が、政治や社会や文化、そして人々のたくましさを通じて浮かび上がる。

特に独自の「社会的協同組合方式」による劇的な成果だけでも一読に値する。これを遠い国のお話で終わらせてはもったいない。

政府、お上に頼らず知恵と行動で町の魅力を生み出そうとする市民たちの姿はすいっと読めるが含意は重い。著者の永年の思いが露ほども裏切られずに終章に至るというのは、ほとんど奇跡的である。(純)

文藝春秋 1250円

Amazonで見る
楽天で見る

関連記事
Topic Board トピックボードAD
人気連載
Trend Library トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチAD
トヨタの焦燥<br>トランプ 次世代車 ケイレツ<br> 3つの難題

エコカーの金看板「プリウス」に大逆風。トランプ大統領が「米国に工場作れ」と名指しで批判。アップル・グーグルが参入し、次世代車の開発競争激化。トヨタの変革は急ピッチで進む。