トランプ大統領が練る司法妨害捜査の反撃策 ミュラー特別検察官との対決が始まった

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ミュラー特別検察官がトランプ大統領を司法妨害の捜査対象にすると、ワシントンポスト紙が報じる少し前に、トランプ氏はミュラー氏を解任するのではないか、という情報が飛んだ。ミュラー氏はそれにリベンジする形で、司法妨害捜査を決意した、ということが事実だとすると、その2人の対決は異様としか言いようがない。

この司法妨害のほかに、トランプ大統領はもう1つ法律上の難問を抱えている。それは不法移民の入国を規制する大統領令が、連邦控訴審で違憲判決が下されていることだ。トランプ大統領は「合法だ」と主張して、最高裁に持ち込む構えだが、最終的にトランプ政権側が勝てる保証はない。

オバマ氏の「苦い経験」の轍をトランプ氏も踏むか

ここで注目すべきは、トランプ大統領がいま追い詰められている状況と同じように、実はバラク・オバマ前大統領も自らのレジェンドの政策をめぐって苦戦を強いられ、トランプ氏と異なり、控訴審の決定では勝っていたが、連邦最高裁の決定で負けるという苦い経験があった。トランプ氏もその事実は知っている。

オバマ氏の「苦い経験」とは、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」にかかわる環境規制政策において、司法との三権分立の戦いに敗れたことだ。

アメリカでは、二酸化炭素(CO2)の3分の1は発電所から排出され、その4割は石炭火力によるものだ。オバマ政権は、そんな石炭産業に対してCO2の排出を削減させようとした。いわゆるクリーン・パワー・プランという環境規制政策である。

オバマ氏は、外面(そとづら)を整えることによって、オバマ氏の説得に最終的に応じた中国とともに「パリ協定」に参加し、大統領としてのレジェンドを残そうとしたのだ。そんなオバマ氏のレジェンド志向に石炭業界は黙っていられない。27州が結束して環境規制政策に反対し、クリーン・パワー・プランの無効を訴えた。

クリーン・パワー・プランは2015年8月に発表された。その実施をめぐって、いろいろ紆余曲折があった。石炭業界と多くの州は、その実施をオバマ政権への訴訟の後に延ばそうとした。その試みを控訴審は認めなかったが、2016年2月に連邦最高裁でオバマ政権側の逆転敗訴の決定が下された。オバマ大統領は石炭業界の法的戦略の封じ込めに失敗したのだ。しかし、その判決後もクリーン・パワー・プランは強行実施され、「パリ協定」が批准された。

トランプ大統領は、6月1日、その「パリ協定」から離脱することを発表した。それは周知のことだが、すでに3月の段階で、クリーン・パワー・プランの見直しを環境保護庁(EPA)に命ずる大統領令に署名している。クリーン・パワー・プランは、事実上、廃止されている。

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