30代夫婦は65歳までいくら貯めればいいのか 子どもの教育資金を保険で貯めてはいけない

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
拡大
縮小

岩城:保険がすべてダメだと言っているわけではありません。しかし、おふたりが持っている終身死亡保険は、これ以上、保険料を支払い続けてよい商品ではありませんし、おカネの置き場所として、もっと適切な場所があります。これ以上、損を膨らませるのは経済合理的ではありません。悔しい思いをしましたが、すでに支払ってしまった保険料は、もう取り戻すことのできない費用(=サンクコスト)と割り切って、解約するのが賢明でしょう。

保険を解約して教育費を「人生設計の基本公式」に反映

『人生にお金はいくら必要か』。「計算式の基本的な使い方や活用法」を解説した完全ガイドブック。好評発売中です(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

岩城:さて、保険は手痛い失敗でしたが、いまわかっただけで対策が打てます。お嬢さんの学費も考えながら、「人生の基本公式」からおふたりのマネー設計を考えてみましょう。さきほど現在資産額は500万円ということでしたが、退職一時金や、将来的に確実に入ってくるおカネはありますか?

聡さん:退職金と妻の中小企業倒産防止共済の積立金を合わせると、1500万円くらいあります。

岩城:なるほど。では、現在資産額500万円に1500万円をプラスし、大学資金を多めに見積もり700万円を差し引くと、1300万円になりますね。それで必要貯蓄率を計算すると、19.21%になります。必要貯蓄額は、年間約153万7000円。毎月だと約12万8000円ですね。

いかがですか? 貯蓄できそうですか?

教育費を考えた場合の必要貯蓄率

真希さん:毎年35万円払っていた、終身保険の保険料分を貯蓄に回せばなんとかなりそうです。

岩城:聡さんも真希さんも個人型確定拠出年金(iDeCo)に入れるので、これをおカネの置き場所として最優先としましょう。年間約153万7000円を貯蓄するわけですから、それぞれiDeCoに年間27万6000円ずつ、残りの98万5000円は、リスク商品を持つなら証券のNISA(少額投資非課税制度)口座で、リスクを取らないおカネの置き場としては、将来のインフレリスクをヘッジできる「個人向け国債変動10年」を購入するとよいでしょう。NISAと国債の割合については、どのくらいリスクをとれるのか、よく考えておカネを置いていきましょう。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT