アップルがクアルコムを「また提訴」する理由 新型iPhone販売への影響は?

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「クアルコムとの訴訟に関連して、今後の製品に影響が出るとは考えていません。またチップセット供給やそのほかのライセンスに関して、これを阻害されるとも考えていません。公正な取引の状態を作り出せるかぎり、クアルコムとのパートナーシップは継続させていく考えです」

これまで、アップルはiPhoneやiPadに対して、クアルコムのモデムチップセットを採用してきた。しかしiPhone 7で初めて、インテル製のモデムチップを採用しており、今後もインテル製モデムを採用する割合が増えていくとも見られている。

水面下で進むアップルの「対策」

また、アップルはクアルコムで半導体部門を総括する副社長を努めた経験を持つエシン・テルジョグリュ氏を引き抜いたことが明らかになっており、独自の通信チップセットの設計や開発に取り組むとの見通しも明るくなってきた。

アップルはiPhoneに搭載するプロセッサについて、A4プロセッサ以降、独自の設計へと切り替えている。またApple WatchやAirPodsなどのデバイス向けのプロセッサも、独自開発によってそのメリットを独占するようになった。

グラフィックスに関しても、独自の設計へと移行するとみられており、通信チップセットの独自開発化も、さほど驚くべき話とは言えない。

もちろん独自設計を行うとしても、クアルコムとのライセンス問題がつきまとうことになるが、今回の訴訟でクアルコムの影響力を最小限にすることで、より自由度の高い開発へと踏み込んでいくことができるだろう。

他方、クアルコムにとっては、今回の訴訟を含め、アップルとの問題を着地させたとしても、最大顧客の失注という事態を避けられないことになりそうだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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