米国で流行「段ボールベビーベッド」は安全か フィンランド式子育ての幻想?

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ベビーボックスの人気の主な理由は、それがフィンランドで浸透しているからだ。フィンランドの乳児の死亡率は1000人中1.7人で、米国の3分の1以下だ。フィンランドでは、母親が妊娠4カ月までに検診を受ければ、ボックスが無料で支給される。

だがベビーボックスは、フィンランドで母親たちが受けている医療サービスのひとつにすぎない。同国でベビーボックスの製造と支給を監督している「ケラ」の上級研究員、アニタ・ハータヤは、ベビーボックスが乳児の死亡防止に役立つことを示す研究はないと明言する。

さらにフィンランドの親たちの多くは、このボックスをベッドとしては使用していない。ハータヤによると、最近の統計でベビーボックスで赤ちゃんを寝かせている家庭はわずか37%だったという。

シンシナティ小児病院医療センター周産期研究所で新生児部門のディレクターを務めるジェームズ・グリーンバーグは、フィンランドで乳児の死亡率が米国に比べて低い主な理由は、早産率が低いからだと言う。

「ベビーボックスが乳児の死亡率を減少させるという考えは理にかなってはいない」と、グリーンバーグは言う。「米国における乳児死亡の最大の要因は早産であり、ベビーボックスがそれに対処できるというのは説得力がない」。

親と同じベッドで寝かせない

テンプル大学は先日、ベビーボックスの支給プログラムは親たちの睡眠方法に影響する可能性があるとする研究結果を発表した。

同大学のプログラムに参加し、看護師から直接睡眠に関する教育を受けてベビーボックスを支給された母親は、教育は受けてもボックスを支給されていない母親に比べ、出産から8日目までに赤ちゃんと同じベッドで寝る率が25%も低かったという。

母子が同じベッドで寝ることは、乳児の窒息やその他の睡眠時死亡のリスク要因となっている。AAPは、乳児は仰向けにしてひとりで寝かせ、また柔らかい寝具は使用しないよう推奨している。

テンプル大学病院の新生児室のメディカルディレクターで、研究論文の主執筆者であるメーガン・ヘーレは、ベビーボックスが安全な睡眠につながる可能性があると考えている。「現時点では危険とみなす理由がない」と、ヘーレは言う。

だが米国におけるベビーボックスの年間支給数は、フィンランドの3万5000個をすでに上回っており、一部の専門家は米国の膨大な数の乳児たちに同じ結果をもたらすとは言えないと主張している。

AAPのムーンは、親たちがベビーボックスの安全性を確信できるようになるにはさらなる研究が必要だと指摘する。ムーンは言う。「私は自分の子どもには、CPSCの規格を満たしたものを使う」。

(執筆:Rachel Rabkin Peachman記者、翻訳:中丸碧)

(c) 2017 The New York Times News Services 

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