「創造的破壊」の時代を生き残るため

企業と人に求められる協業と働き方改革

「創造的破壊」において、まず取り組まなければならないのは、目に見えないヒエラルキーや組織の悪しき慣習、しがらみを破壊することだ。デジタル化の足かせとなっていた「書類」を企業社会の束縛から解き放つことで、誰もが“自分らしさ”を発揮できる働き方変革を実現できる。

もはや消費者だけではいられない
誰もが生産者側に回れることが大切

渡邊 堀さんはジャーナリストとしてのお立場から、現在の「デジタル化」という時代の潮流をどのように捉えられていますか?

堀 デジタル化の一番良いところは、時間と物理的な距離の概念を大きく覆したことにあると思っています。例えば金融の世界では、0コンマ何秒のオーダーで地球の裏側の金融市場と取引を行っています。情報も同じで、世界中のどこにいてもリアルタイムにファクトを共有できます。これはとても魅力的なことで、誰もが世界中の知見を集められるようになったことを意味しています。

渡邊 確かにフラット化、いわゆる情報格差をなくす上でデジタルが果たしている役割は大きいですよね。いまはほとんどの人がSNSのアカウントを持っていますし、誰もがジャーナリストになれる可能性を持っています。一方でタクシー業界を激変させたUberのように、誰もがデジタルデバイスを持ち、ネットワークにつながる環境を上手に利用して、ビジネスを変えていく、いわゆる「創造的破壊」を行う企業も現れてきました。

堀 私の好きな言葉の1つですが、米MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボには「未来を予測する最良の術は、自ら作り出すことだ」というメッセージがあります。これが示唆するものは何か――。私たちは“消費者”になることには慣れていますが、“生産者”の側に回るためには高いハードルがありました。これまではそれで良かったわけですが、資本主義がここまで成熟したなかで世界経済が次のステージに進んでいくためには、 これまでにない新たな価値を生み出していかなければなりません。そうなると特定の人だけが生産を担っていたのではだめで、誰もが生産者になる必要があります。Uberをはじめとする、いわゆるシェアリングエコノミーは、そうした時代に台頭してきた象徴的な動きではないかと捉えています。

イノベーションは“無”からは生まれない
創造的破壊の根底にあるのは「協業」

渡邊 創造的破壊の波に乗り遅れると、収益性の差が26%に広がる。あるいは10年後には40%の企業のビジネスが持続不可能になる※※といった調査結果があります。その意味で、伝統的な企業にとって創造的破壊は脅威となっているわけですが、堀さんが考える「創造的破壊」についてお聞かせいただけますか?

※「より効果的なドキュメントワークフローによる業務改革」(IDC Infobrief、スポンサー企業:アドビ、2016年4月)
 ※※ワシントン大学ジョン・M・オーリン・ビジネス・スクールによる調査(CNBC Finance、2015年5月)

堀 “破壊”というと、いまあるものを無きものにしてしまうイメージがありますが、私としては創造的破壊の根底として大切なのは“協業”という思いを持っています。イノベーションは何もないところから生まれるものではなく、過去何十年にわたって積み上げてきた基礎研究が、ある日を境に新たな技術やサービスとして変化を遂げた結果なのです。したがって、上の世代の方々が築いてきた成果はリスペクトすべきですし、活用できる資産はどんどん活用して発展を目指すのが合理的ではないでしょうか。それが私の考える“協業”のイメージであり、伝統的な企業にもイノベーションを起こして新たなビジネスチャンスを掴むことができると考えています。

「書類」から変えていくことで
誰もが自由に活躍できる働き方を実現

渡邊 堀さんのおっしゃるような“協業”を、どうすれば日本の中でもっと活発に起こすことができるのでしょうか?

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