FRB「笛吹けど踊らず」、年末1ドル100円に みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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イエレン議長としては次の不況に備えて金融政策の正常化を急ぎたいところ(写真:ロイター/アフロ)
FRB(米国連邦準備制度理事会)は6月14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利上げを決定。併せて量的金融緩和で拡大したバランスシートの縮小に2017年内に着手することを声明文に記載した。政策メンバーによる利上げ見通し、いわゆるドットチャートは、年内に1回、2018年中に3回の利上げを示唆している。今後の為替見通しについてみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏に聞いた。

――FRBの政策決定を受けて、今後の為替相場をどう見ますか。

足元の経済指標が強くないにもかかわらず、FRBは一過性のものとみなして、強気だった。しかし、その理屈は理解が難しい。本来あるべき姿は、経済指標が強いので、利上げしないと景気が過熱するのではないかと考えて、利上げを行うというものだ。この場合は、市場にも違和感がない。しかし、今は、物価をはじめとして指標が強くない。FRBが執拗に利上げをすると言っているので、短期の金利はそれを織り込んで上昇しているが、その先については懐疑的なため、長期金利が追随していない。そのため、ドルもあまり上昇しない。

歴史的にも利上げが始まるとむしろドル安に

歴史的にも、利上げをしたから長期金利が上がるということには、実はなっていない。2004~2006年にグリーンスパン議長(当時)が17回連続で累計4.25%ポイント政策金利を上げたが、長期金利は0.5%しか上がらなかった。連続利上げにもかかわらず長期金利が上がらない。いわゆるグリーンスパン議長がコナンドラムと呼んで有名になった現象だ。今の利上げ局面でも今回までで1.00%ポイントあげたが、最初に利上げした2015年12月と現在で長期金利はほとんどかわっていない。

ドル高円安を予想する人の理屈は、往々にして利上げをすれば米国の長期金利が上がり、日米金利差の拡大に応じて米国への証券投資などが増えてドル高円安になる、というものが多いように見受けられる。だが歴史的には、利上げする前こそそのような動きになるが、実際に利上げが始まると、むしろ、長期金利は上がらず、ドル安になることのほうが多い。その理由は1つではないが、利上げによって引き締めの効果が出て景気が減速すると市場が考えることもあるだろう。

今は長期金利もドルも大して上がらないので、まだ利上げしても大丈夫だという考え方がFRBにも市場にもあるかもしれない。だが、着実に、住宅ローン金利やオートローンの金利は上がるわけで、こうしたことが実体経済に影響してくる。いや、影響してこなければおかしいだろう。

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