ICTで医療現場はもっと効率化・快適化できる

医療業界に欠かせない「紙」の必要性とは

男性では80.79歳、女性では87.05歳と年々伸び続ける日本人の平均寿命。目の前に迫った超高齢社会で充実した医療サービスを維持するため、現場では今、何が求められているのか。医療費抑制と現場の効率化・快適化を両立するICT化の可能性について、医療ICTコンサルタントの大西大輔さんに話を伺った。

ICT化が医療現場で遅れている理由

世界でも例のない超高齢社会に向かっている日本。2025年には、高齢化のラインである65歳以上が人口の30%を占めると言われている。

こうした超高齢社会では、これまで以上に医療が担う役割は大きくなる。実際、国の医療費は2015年に41.5兆円に達している。

こうした状況は、医療の現場にどんな影響を与えているのだろうか。医療ICTコンサルタントとして医療業界の変遷を見てきた大西大輔さんはこう説明する。

大西 大輔/MICTコンサルティング代表 2001年、一橋大学大学院MBAコースを卒業。同年、医療コンサルティング大手・日本経営グループに入社。2002年に医療IT製品の常設総合展示場「メディプラザ」を立ち上げ、IT導入コンサルティングや研修事業等を手がける。2016年に医療ITコンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。日本医師会等での講演も多数行っている。

「この超高齢社会では、高齢者が増加する一方、生産人口が減少しているため、『いかに少ない人員で、効率よく、患者様が満足する医療サービスを提供するか』が大きな課題となります。その課題を解決するのがICT化です。国も医療費を抑制する方向へ進んでおり、医療費抑制のための方策を二つ打ち出しています。一つは自由診療の拡大、つまりは保険分野の縮小です。そして、もう一つは診療報酬の改定率の抑制です。医療費は抑制されるのに、医療機関のコストの5割を占める人件費は、深刻な人手不足の中、上昇に転じるでしょう。売上減、コスト増は利益を減少させますから、医療機関経営は従来のやり方では難しくなるのです。コストを抑える観点から、ICT化が医療現場で求められているのです」

国も2001年には電子カルテの普及を推進し始めたが、そもそも医療現場のICT化は他の業界に比べ、5年は遅れていると大西さんは語る。

「現在、病院は8500施設ほどあるのに対し、診療所は10万施設も存在します。診療所の開業医の平均年齢は約57歳で、パソコンが苦手、あるいは嫌いといったITアレルギーの医師も少なくありません。また、パソコンが一人1台ある一般企業と異なり、診療所では個人のパソコンではなく、複数人が共有するパソコンという位置づけです。そうしたことから、医療現場ではICT化が遅れていたのです」

ある誤解も医療現場のICT化を阻んでいたと大西さんは見る。

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