アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図 ホールフーズ買収は一例にすぎない

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リアル店舗の開発にも乗り出している。一つ目は2015年にオープンした専用書店の「アマゾン・ブックス」、二つ目は2016年に存在が明らかになった無人コンビニ「アマゾン・ゴー」だ。アマゾン・ブックスは現在米国に8店舗あり、追加で5店舗のオープンが予定されている。店内にはアマゾンのサイト上でユーザーの評価が高い本を重点的に陳列したり、お急ぎ便や動画視聴の使い放題サービス「アマゾン・プライム」の会員なら安く買える仕組みがあったりするなど「リアルとネットの融合」が巧みに行われている。

アマゾン・ゴーは現在、シアトル市の本社1階部分のみに存在し、まだアマゾンの社員しか利用できない。ただ、レジを通らずに商品を購入し持ち出せる画期的な仕組みは小売り関係者の間で注目の的となっている。将来的にアマゾン・ゴーの機能が今回買収したホールフーズに導入されることがあるかもしれない。

生鮮食品サービス「アマゾン・フレッシュ」で注文した商品を直接受ける取ることができるドライブスルー。米国で2店舗試験展開されている(写真:会社提供)

またもう一つ、今年に入ってから「アマゾン・フレッシュ・ピックアップ」というドライブスルー型の商品受け取り専用店舗が始まった。

これは日本でも今年4月から始まった生鮮食品の販売・配送サービス「アマゾン・フレッシュ」と連動した店舗だ(ピックアップの展開は現在米国のみ)。利用者はフレッシュで注文した商品を専用店舗で直接受け取ることができる。スーパーマーケットの店内を回遊せずとも事前にオンライン上で注文を済ますことができるため、ユーザーが買い物にかける手間は大幅に減る。これもホールフーズとの将来的な連携が期待される。

4月下旬に行われた2017年度第1四半期(1~3月期)の決算説明会でアマゾンのブライアン・オルザブスキCFOは「リアル店舗の開発はわれわれにとって顧客にリーチするもう一つの手法だ。リアルの顧客がどう共鳴(resonate)してくれるかをテストしている」と語っている。eコマースで断トツのシェアを誇るアマゾンとはいえ、小売り全体に占めるeコマースの消費額は米国でも10%未満とされている。リアルを取り込むことはまさに必然の流れであり、ホールフーズの買収はその一環に位置付けられる。

増築続けるアマゾンのシアトル本社に潜入

6月24日号の週刊東洋経済では「アマゾン膨張」を特集。アメリカ西海岸の最北部にあるワシントン州シアトルの本社に潜入し、2016年度にグローバルで1360億ドル(約15兆円)の売上高を記録した流通王国の全貌に迫った。広大な本社群周辺の様子からは、世界で膨張を続けるアマゾンのイメージとは別の側面も見えてくる。

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