法人税減税は賃金アップにつながるか?

投資や賃金に生かせるか企業次第

8月15日、安倍首相が検討を指示したと一部で報道された法人税減税について、その効果を設備投資や賃金アップにつなげることができるか、企業の知恵や決断次第となりそうだ。写真は2010年8月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 15日 ロイター]- 安倍晋三首相が検討を指示したと一部で報道された法人税の実効税率引き下げ(法人税減税)について、その効果を設備投資や賃金アップにつなげることができるか、企業の知恵や決断次第となりそうだ。

経済界からはコスト削減で国際競争力向上や日本の立地競争力強化につながると期待する声が出ている一方、設備投資の拡大や雇用・賃金改善への波及については、エコノミストだけでなく、経済界からも企業の投資行動がカギを握るとの指摘が出ている。

仮に法人税減税でキャッシュフローが潤沢になっても、企業自身が内部留保の積み上げに回せば、減税─投資─賃上げ─国内需要増という前向きの循環につながらない可能性が高まる。「呼び水」となるような追加的な成長戦略も不可欠ながら、法人減税を渇望している企業自身の対応が試されることになる。

コスト競争力向上と立地競争力に寄与

企業サイドには、安倍政権の成長戦略の目玉は法人税減税だとの声が根強く、経済界からは「法人税減税の実現」を求める提言が何回も発表されてきた。経済同友会では7月に法人実効税率を25%に引き下げるべきとの提言をまとめており、減税が実現すれば、ビジネスコストの引き下げや立地競争力の強化につながるとして歓迎する意向だ。

経団連も従来から法人税減税を強く求めてきた。「安倍政権の成長戦略に法人減税は入っていないものの、その後の見直しで、年末までに議論が続いていくことを期待したい」(経団連関係者)としている。というのも「投資減税は対象を絞ったかたちになる可能性がある」とし、効果を受ける業界が偏ることになるリスクを懸念しているからだ。

政府内でも、1月に安倍内閣がまとめた緊急経済対策の中で、補助金や税制支援の対象が主に先端設備投資や環境投資だったため、恩恵を受けにくい中小の非製造業の設備投資は弱いまま推移しており、その実態が6月日銀短観にも出ているとの見方がある。

ロイターが7月に実施した企業調査でも、個別企業が成長戦略で最も大きな期待を寄せるのが法人税減税だ。「国際競争に影響する税率の引き下げは不可欠」(その他製造)、「海外移転の抑制」(運輸)といった理由のほか、「研究開発投資余力の増強となる」(機械)、「設備と雇用の増加につながる」(精密機器)などの声も数多く出ている。

しかし、麻生太郎財務相は15日の会見で、今の段階で法人税を引き下げることに効果は少ないとの認識を示し、菅義偉官房長官は同日の会見で、法人税減税について安倍首相が検討を指示したとの一部報道について「総理がそのような指示をした事実はない」と否定した。ただ、「これから50人前後のいわゆる有識者や現場で商売をしている方などの意見を聞く中で、総理が判断をすること。まずは意見を聞くことから始まる」と述べ、今後の展開に含みを残した。

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