「株主資本主義」以外の選択肢は存在するのか 永野健二氏と村上世彰氏が語る資本主義の今

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永野健二(ながの けんじ)/1949年生まれ。京都大学経済学部卒業後、日本経済新聞社入社。証券部の記者、編集委員としてバブル経済・バブル期の経済事件を取材。「日経ビジネス」「日経MJ」の編集長を歴任。名古屋支社代表、大阪本社代表、BSジャパン社長を経て現在は日本経済新聞社客員。共著に『会社は誰のものか』『株は死んだか』『宴の悪魔――証券スキャンダルの深層』『官僚――軋む巨大権力』(いずれも日本経済新聞社刊)。最近『バブル』(新潮社)を著し注目を浴びた(撮影:今井康一)

永野:スチュワードシップコードに合わない投票行動をしたら犯罪になるのかな。

村上:なりません。

永野:ならないよね。

村上:ならないけれども、「この人たちはちゃんとやってない人たちだ」という烙印を押される可能性があります。

永野:そうだね。

村上:機関投資家は株主価値向上につながる議決権行使をしなくてはいけなくなると思います。だから私はすごくうれしいです。

永野:村上さんのように本気で筋論でやるという人はいそうで、いなかった。

村上:はい。

永野:歴史的に見ると日本にとっては小糸製作所がピケンズに追い詰められたのが第1ステージ。そして村上ファンドが第2ステージではないかと考えています。

村上:資産バブル崩壊直後にコーポレートガバナンスが定着していたら、日本はバブルの処理がもっと楽だったかもしれません。

内部留保は誰のものか

永野:村上さんが東京スタイルに仕掛けたプロキシーファイトは面白いと思った。ただ、当時の私が「多少、村上さんと違うな」と思ったのは、「現在の株主が現在のことについて言うことは可能だが、内部留保は過去の株主の時代から積み上がったもの。現在の株主が豊富なキャッシュをどうこういうのは違うだろう」と。今も半分はそう思っている。

村上:そうすると今の商法は改正したほうがいいということでしょうか。今の株主は過去の経緯も含めて値段を付けて買っている株主であり、商法は「過去に株主だった者」にではなく「現在の株主」に議決権を与えています。

永野:それはそうだが、しっかりとした安定多数の株主と経営者の間で、未来についても考えつつ議論すべきでね。

村上:当時、東京スタイルの株主のうち、持ち合いをしていた株主を除けば6割から7割は私に賛成票を投じました。年金は反対でしたが。上場株は自由に売買ができて、株主の多数決で物事を決めていくというフェアなルールに世界中どこでもなっています。

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