現行iPhoneに「iOS 11」がもたらす3つの進化 「倍の枚数」の写真が保存できる!

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2つ目は、端末内での文脈の分析での利用だ。たとえばSafariで「アイスランド」を検索していたら、メッセージを入力する際に「れい」まで入力すれば、アイスランドの首都の「レイキャビク」を推測変換の候補に挙げてくれたり、ニュースアプリでアイスランドの旅行の記事を挙げる、といった機能を実現する。

iOS 11向けに開発されるサードパーティーのアプリにも、こうした「自分のためだけの賢さ」を実現する機能が採用されていくことが考えられる。

たとえば水分補給を記録するアプリがあるとすれば、過去にどのドリンクを好んで飲んでいるかを学習してお勧めの商品を表示してくれたり、その糖分・塩分・脂肪分を参照して飲み過ぎへの注意喚起を行ったり、熱中症が予測される気象条件と運動の状況を察知して、水分補給を先回りして知らせてくれるようになるだろう。

気象条件はその都市に住んでいる人であれば万人に共通だが、その気象条件の中でどれだけ運動しているかは千差万別だ。アプリが通り一辺倒の通知を送るのではなく、個人に合わせた賢さを発揮するようになることを意味するのだ。

「今のiPhone」で、ARが楽しめる

WWDC 2017で披露された、ARのデモ(筆者撮影)

iOS 11の目玉の機能として挙げられたのは、拡張現実(AR)への対応だ。iOS 11には「ARKit」と呼ばれるAPIを搭載し、開発者は簡単にAR機能をアプリに盛りこむことができるようになった。

アップルによるARのデモは、フェイスブックやグーグルと同じように、カメラを通じて現実の世界を取り込み、その中のものを認識したり、デジタルの情報や物体を配置する、といった内容だった。

カメラの中のテーブルの上にカップやスタンドライトを配置したり、床面にイスを配置するといった非常に基本的なARのデモプログラムだったが、複数の平面を認識してそれぞれの平面に物体を配置したり、テーブル上の距離やサイズを非常に正確に認識している点は、ARKitのポテンシャルを感じさせる。

AR活用アプリでわかりやすいのは、ゲームだ。テーブルの上にゲームボードを配置して楽しんだり、「ポケモンGO」でポケモンがきちんと地面の上に立っていたり、といった演出は、ARならではの体験となる。また、これはフェイスブックが紹介していた活用例だが、お店や自宅の台所にメモを置いたり、その場所で撮影されたインスタグラムの写真を、実際の風景の中に配置したり、といった新しい楽しみ方も提供してくれそうだ。

ポイントは、A9プロセッサ以上を搭載するiPhone/iPadで、iOS 11のARKitを活用したアプリを動作させられる点だ。つまり、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone 7、iPhone 7 Plus、iPhone SEであれば、ARKitを生かしたアプリを使うことができる。iPadであれば、iPad Proシリーズだ。

iOS 11がリリースされる秋には、おそらく4億台ほどのiPhoneがARKitをサポートすることになり、そのためアップルは「世界最大のARプラットフォーム」と紹介したのだ。秋にはiPhoneの新モデルが期待されているが、ARについては、既存のiPhoneの多くのモデルで楽しむことができる。

今回は、iPhoneにもたらされる最もインパクトが大きい3つの変化について紹介した。いずれも、アップルのiOSだけで実現されるわけではない。iPhone向けのアプリ開発者がこれらの新機能が使うことによって、われわれの普段のiPhoneの使い方に変化が訪れることになる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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