「2階建て高速列車」フランスがこだわる理由 日本ではもうすぐ消える運命だが…

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その後もTGVの利用客数はさらに拡大していることから、TGV-Duplexは引き続き、フランス国内の他路線へ投入することも決定しており、手始めに東線へ導入されている。東線沿線には、ナンシーやメッス、ストラスブールといった地方都市があり、その先のスイスのバーゼル、ドイツのフランクフルトまで乗り入れる列車も走っていて、TGV-Duplexはこれらの路線に運行されている。今後は、ボルドーへの延伸開業を控えた南ヨーロッパ・大西洋線へ集中的に投入されていくことになる。

TGV-Duplexの1等車1階席。天井は平べったく、とても圧迫感がある(筆者撮影)

このTGV-Duplexだが、実際のところ車内は決して快適であるとは言いがたく、天井の高さに圧迫感を感じる。身長180センチの筆者が通路に立つと天井が頭につきそうで、もっと背の高い外国人だと、かがまなければならないはずだ。2階席は弧を描くような天井となっているため多少はましだが、1階席は平屋根で、狭い印象を受ける。

また、十分なサイズの荷棚を座席上に設置するスペースがまったくなく、帽子や衣類、小さなカバン程度しか頭上には置けない。その代わり、客室内に数カ所の荷物スペースが設置されている。

なぜ機関車方式を採用し続けるのか

しかし、フランスがTGV-Duplexに固執する理由は、輸送力増強だけが理由ではない。少し鉄道に詳しいファンなら、TGV-Duplexがいまだに前後の機関車が中間客車を牽引・推進する、動力集中方式を採用し続けていることを不思議に思う人もいるだろう。

これについては、2017年1月8日付の記事「フランスが最新型高速列車を導入しないワケ」において解説をしているが、フランス特有の事情によるものだ。

かつて、ヨーロッパの高速列車黎明期はこの方式が主流で、各国の高速列車はいずれも動力集中方式を採用していた。しかし、日本の新幹線と同じような、各車両にモーターを装備する動力分散方式のほうがエネルギー効率が良く、加減速や高速運転時の性能面においても有利と言われ、各国ともこちらに舵を切った。ドイツのICE3、イタリアのフレッチャロッサ・ミッレなど、最新の車両はいずれも動力分散方式を採用したのだ。

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