スバルの懐刀「アイサイト」は競争に勝てるか ぶつからないクルマが、また一歩進化した

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しかし、近年は自動車メーカー各社が自動ブレーキなどの運転支援システムでしのぎを削っている。アイサイトの地位も危うくなってきた。

衝突安全システムの性能でつねに先端を走ってきたアイサイトだが、昨年、自動車事故対策機構による評価試験「予防安全性能アセスメント」で、マツダが展開する「i-ACTIVSENSE」に首位の座を譲った。吉永社長は「モデルチェンジのタイミングにより、瞬間的に抜かれることもある。スバルはつねに価格と性能を両立させたものを作る」と弁明する。

スバルで車両開発を統括する第一技術本部長の大拔哲雄常務は、「やっぱりアイサイトがいいね、と言われるためには、歩行者や自転車の飛び出しなどが起きる一般の道路でもしっかりと認識・制御する性能面での差別化が必要」だと語る。

テストコースの拡充で開発を加速

アイサイトの肝となっている「ステレオカメラ」(写真:SUBARU)

2025年までに実際に事故の多い交差点での危機回避を行うシステムを開発することも明らかにした。30億円を投じて今年度の下期に改修を終える北海道のテストコースで、より多くの道路状況を想定した実験を進めるという。

ほかにも細かな誤作動などの改善に向け、状況判断のソフトウエアの開発も進める。今年度の研究開発費は1340億円と、前期比で約200億円増える。これは過去最高の水準だ。

また、競争は価格面にも表れる。従来アイサイトは10万円に抑えたオプション価格も魅力だった。今夏発売のレヴォーグやWRX S4の改良モデルはアイサイトが標準搭載になるが、ほかの機能の充実化を含めて、いずれも現行のアイサイト搭載モデルから数万円の値上げとなる。

しかし、日産の新型エクストレイルに搭載された自動運転技術「プロパイロット」は、昨年ミニバン「セレナ」に搭載したときから10万円以上価格が下がった。各社が低価格化を進める中、スバルがどこまで対抗できるかは未知数だ。

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