子どもを伸ばす「ゴルフ教育」のスゴい中身 「勉強に自信持てるようになった」と感想の声

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プロゴルファーを育てるのが目的ではなく、元々はゴルフをできる環境にない子どもたちがゴルフを通じて「ナイン・コア・バリュー(生きていく上で必要な9つの能力)」という正直さ、誠実さ、スポーツマンシップ、尊敬、自信、責任、忍耐、礼儀、判断を培い、同時に「ナイン・ヘルシー・ハビット(健康で活動的な9つの生活習慣)」というエネルギー、遊び、安全、ビジョン、心、家族、学校、友達、地域社会について学び、理解していこうというプログラムだ。

日本でも「ザ・ファースト・ティ・ジャパン(TFTJ)」が活動している。2011年にNPO法人化し、2015年から米国のプログラムに沿って活動が始まり、昨年は10カ所で開催し、約1000人が参加した。今年は倍以上の22カ所での開催を予定している。

どんなことをやっているのだろうか。速水忠保TFTJ事務局長によると「まず、ゴルフは少ない打数でホールに入れるゲームだということを理解してもらう」という。いきなり大きなクラブを打たせるのではなく、パターから始める。実際に球を打たせてもうまくいかない場合に、どうやったらうまくいくのかを自分で考えさせる。コーチはその子どもから考えを引き出しながらアドバイスし、徐々にうまくなっていこうというやり方だという。

身に付けるのは「ゴルフの技術」に限らない

子どもたちは自分のレベルを示すカードを持つ。レベルは、小学1年の「プレーヤー」から始まり、「パー」「バーディー」「イーグル(中学1年以上)」と4段階が設けられている。実技試験と先述したナイン・コア・バリューやナイン・コア・ハビットに関する筆記試験の結果と年齢で上がっていく。そうは言っても、レベルを上げるためのハードルは低い。たとえば、パーレベル(小3以上)だと9ホールのスコアは72以下で、ダブルボギーペースだから、取っ付きやすさがある。

筆記試験もあいさつや敬意などのふるまいに関する内容だ。古屋浩TFTJプログラムコーチによると、子どもたちがゴルフをやっている最中に実践できていると評価できれば、試験なしで「合格」ということもあるという。子どもたちの持つカードに、達成できたところをチェックしていき、全部埋まれば合格。次のレベルに上がる、というワケだ。

参加するにはTFTJに申し込み、プログラムが開催されるゴルフ場に行けばいい。費用は開催するゴルフ場や練習場に任せており「1回の受講料は2000円が上限」(速水事務局長)という。

子どもたちへのアンケートによると「勉強に自信が持てるようになった」(73%)「友達とうまくやって行けるようになった」(82%)「初めて会う人とうまくやれるようになった」(52%)など、精神的な成長に役立っているようだ。

この活動には、子どもに接する専門のコーチが不可欠だ。コーチは単に「ゴルフの技術」を教えるのではなく、むしろ「ゴルフを通じた教育」をメインテーマにしている。その専門コーチを養成するための研修会が5月に開かれた。コーチにもレベル1~3があり、こちらも各レベルの研修会を受講し、課題をクリアして上のレベルになっていく。速水事務局長は「日本にはコーチを教えるコーチ(ヘッドコーチ)がまだいないので、米国から招いている」という。

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