ダイレクト自動車保険「業界地図激変」の構図 後発組が成長する一方、歴史ある会社が撤退

拡大
縮小
自動車保険の日本における通販比率は欧米に比べてまだ低い(写真:tomcat / PIXTA)

「国内自動車保険に占めるダイレクトのシェアは8%近くまで上昇した。ただ、このシェアは諸外国に比べると低く、ダイレクトの拡大余地はまだまだある」

ソニーフィナンシャルホールディングスが5月末に都内で開いた戦略説明会で、ソニー損害保険の丹羽淳雄社長はこう話を切り出した。さらに、「後発組が成長する一方、撤退する会社も出てきている」と付け加え、ダイレクト損保の競争環境の激化を示唆した。

対面型の代理店を介さずに、ネットや電話で自動車保険を直接販売する「ダイレクト損害保険」が日本でスタートして今年でちょうど20年となる。現在9社程度が活動しているが、丹羽社長が指摘するように、年間約4兆円の自動車保険市場(元受正味保険料ベース)に占めるダイレクト系損保のシェアは、わずか8%程度にすぎない。

欧米ほどダイレクトが浸透しなかったワケ

ソニー損保は1999年に参入し、「ソニー」のブランド力を生かし、ダイレクト系では2016年度まで15年連続のシェアナンバーワンだ。丹羽社長は「伝統的な形の保険とダイレクトの違いは理解されてきたが、思った以上にダイレクトの浸透に時間がかかっている」と話す。

欧州は国によってはダイレクトのシェアは半分以上、米国も20~30%程度に達する。しかし、日本は20年かかって1割程度に達したに過ぎない。ダイレクトのシェアが低いのには、日本特有の事情もある。

「そもそも自由化が遅く、保険を自分で考えて選ぶ、と理解するのに時間がかかっている。さらに、日本は安全なため保険料はそれほど高くなく、より安い保険料を求めるモチベーションが欧米ほど高くない」(丹羽社長)。また、伝統的に損保代理店が顧客をしっかりグリップしており、ダイレクトがなかなか入り込めていないようだ。

丹羽社長は「われわれの市場調査でも代理店型で契約している人のうち、相当数がダイレクトに興味を持っている」と話し、「最低でも(今の)2倍、少なくとも3倍になっていくだろうと思っている」と楽観している。

次ページダイレクト損保の草分けが撤退
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT