三菱自動車にのしかかる「日産流改革」の重圧 主要部門の執行役員が軒並み日産出身者に

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不正を起こした開発部門でも、従来五つあった部長級以上の階層を三つに減らすなど、組織改善を進めている。日産出身の山下光彦副社長は、「日産の手法を積極的に取り入れた」と話す。

三菱自動車は2000年と2004年に相次いでリコール隠しが発覚し、経営が悪化。多数の技術者をリストラした。慢性的な人手不足が続き、燃費不正問題の遠因となった。会社側は、海外拠点の人材活用や外注により、「ギャップがほぼ埋まりつつある」(山下氏)と説明する。

日産からのプレッシャーが強い

しかし前出の社員は、「開発現場では不正発覚後に多数の人が辞めたうえ、新体制発足後にやることが増えた」と明かす。現場の負荷が軽減されたとはいいがたい。「早期の業績回復を求める日産からのプレッシャーが強く、社員の意識改革が二の次にならないか」と懸念を示す幹部もいる。

国土交通省は三菱自動車に対し、改革の進捗について四半期ごとの報告書提出を求めている。斧田孝夫審査・リコール課長は「三菱自動車は大きな十字架を背負った。企業文化が変わり、社員の法令順守意識は高まるのか、今後も注視する」と話す。

日産流改革は三菱自動車で本当に機能するのか。業績を引き上げることだけが、成功ではない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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