競馬の「馬主」に富裕層以外が増えているワケ 社長でなくても「競走馬を持てる」仕組みとは

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5月28日に開催された競馬の祭典「日本ダービー」を制したのは、2番人気のレイデオロ(クリストフ・ルメール騎乗)だった。レイデオロは、1頭の馬の所有権を細分化して馬主になる「一口馬主」たちの所有馬だ (写真:つのだよしお/アフロ)
中央競馬は春のGⅠシリーズがようやく一段落。3歳馬のレース「クラシック」の頂点を争う日本ダービーは5月28日に開催され、レイデオロが制覇した。名伯楽の藤沢和雄調教師(藤沢和師)が悲願のダービートレーナーに。藤沢和師は、その1週間前、5月21日のオークスもソウルスターリングで制しており、2週連続のクラシック制覇だった。
レイデオロに騎乗したクリストフ・ルメール騎手は、スローペースを見越して向こう正面で一気にまくる絶妙の騎乗。まさに「ルメールマジック」で日仏ダービージョッキーとなった。ルメール騎手はオークスのソウルスターリングにも騎乗。同馬の母スタセリタで仏オークスを制した時と同じように2番手から鮮やかに抜け出した。春のクラシックは藤沢和・ルメールのコンビが席巻した。

 

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ダービーが終わったかと思うと、翌週からは早くも来年のダービーへ向けての戦いが始まる――。6月になると始まるのが、2歳になった馬がデビューする新馬戦だ。

今年の2歳馬の中で早くも注目されているのが、ジナンボー(牡、美浦・堀厩舎)である。父は7冠馬ディープインパクトで、母が5冠馬アパパネ。父母合わせて12冠の超良血が6月11日の東京の新馬戦を圧勝した。

ダービーについて、海外の格言がある。「ダービー馬の馬主になるのは一国の宰相になるより難しい」という言葉だ。

かつてのイギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉とされていたが、どうやらそれはよくできた作り話だったようである。とはいえ、競走馬が3歳時に1回しかチャンスがないのだから、ダービー馬のオーナーになるのが本当に難しい事は確かだ。競馬の母国であるイギリスでも3歳馬の頂点を競うダービーは、特別なレースなのだ。だからこそ、この言葉が本当にチャーチルのものだと信じられてきたのだろう。今年の日本のダービーに話を戻すと、レイデオロは2014年生まれ7015頭の頂点に立ったことになる。

「超難関」のダービーを3度も勝った馬主

実は、日本にはダービー馬のオーナーになるという幸運に、3回も恵まれた強運の持ち主がいる。前述したジナンボーのオーナーでもある、金子真人さんだ。金子さんは横浜市に本社を置く東証1部上場のシステム開発会社・図研を創業し、現在も社長を務める。馬主としては、2004年にキングカメハメハ、2005年ディープインパクト、2016年マカヒキと、3回もダービー馬のオーナーになった。ジナンボーの母のアパパネも金子氏の所有馬だ。こんな幸運な馬主さんもいるのである。

個人の有力な馬主には前述した金子さんのほか、GⅠ5勝を誇る現役最強馬キタサンブラックを所有する歌手の北島三郎さん(馬主の名義は大野商事だが、北島さんが会長を務める実質的なオーナー)がよく知られている。

ほかの有名人馬主には、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで行われるドバイターフを勝った牝馬ヴィブロスや、天皇賞・春で2着のシュヴァルグランを所有する元メジャーリーガーの「大魔神」こと佐々木主浩さんや、GⅠ2勝のサトノダイヤモンドら数々の良血馬を所有し、「サトノ」を冠する馬名で知られる里見治さん(セガサミーホールディングス会長)、「ダート王」コパノリッキーを所有する「ドクターコパ」こと小林祥晃さんらがいる。

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