英タワマン火災は、なぜ大惨事になったのか 火災で露呈した低所得者層向け住居の実態

拡大
縮小
グレンフェルタワー火災の犠牲になった人たちへの追悼メッセージボード(現地で筆者撮影)

6月14日未明、ロンドン西部にある24階建てのタワーマンション「グレンフェルタワー」で発生した火災が、大きな衝撃を与えている。同タワーでは瞬く間に火の手が広がり、少なくとも住民17人が死亡、約80人近くが負傷する惨事となった。

現地メディアは炎に包まれて燃える高層ビルや逃げ惑う人々の様子を刻々と報道。批判の矛先は、住宅の管理に責任を持つ地方自治体や、改修工事を請け負った建築会社に向けられている。数百人が住んでいたタワマンで何が起こったのだろうか。

支援物資を配布する人が足りない

筆者は15日午前、グレンフェルタワーの近くまで出掛けてみた。警察がタワー周辺に進入禁止テープを貼っていたため少し離れた位置から見るしかなかったが、様子を窺い知ることはできた。真っ黒になったタワーの窓の一部からは、まだ煙も立ち上っていた。

最寄駅から見たグレンフェル・タワー。炎はようやく収まった(筆者撮影)

最寄り駅ラティマーロードから歩いて数分の位置にタワーがある。駅のそばにはコミュニティ教会があり、「お茶を飲みたい方、Wi-Fiを使いたい方は中にどうぞ」という貼り紙があった。コミュニティ教会の壁には犠牲者への追悼のメッセージを書けるようになっており、花束も置かれていた。

コミュニティ教会の隣の空きスペースには、着の身着のままでタワーを出ざるを得なかった住民のための支援物資がたくさん積まれていた。パンや毛布、家具、赤ちゃんのおむつ、水が入ったボトル、洋服、家具など。

住民たちはそこからまた歩いて数分のウエスト・ウェイ・スポーツ&フィットネスセンターに身を寄せていた。センターの横の駐車場にも支援物資がうずたかく積まれ、駐車場の前のテーブルには「ボランティア募集」「情報提供」と書かれた紙が貼ってある。

フィットネスセンターに届けられた支援物資。が、配布する人が足りていない(筆者撮影)

いま足りないのは人手のようだ。駐車場の入り口には「もう支援物資を持ってこないで」と書かれた段ボール箱の一片が置かれていた。物資は十分にある。ところが、それを必要な人に必要な時に渡す人が不足しているのだ。

手伝っている人の多くが地元の慈善団体の人である。「(グレンフェルタワーがある)ケンジントン・チェルシー行政区の人が来るべきだけど、まったく顔を見せない」とボランティアの1人が電話口で話す。

次ページ逃げ切れなかった住民もいた
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT