ドッグフードは「薬」として進化を遂げていた 犬向け「療法食」の効果は人間向け以上

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このメカニズムは人間も犬も同じですが、ドッグフードメーカーであるロイヤルカナンやヒルズでは、研究を重ねた結果、人間の場合よりもずっと以前から糖質制限食の効果に気づいていたわけです。糖質制限食であるこの療法食を処方されると、その効果は絶大で、肥満したワンちゃんはたちまちやせるのです。

素人判断で療法食を与えるのは危険

このほか療法食の研究が進んでいるのは、やはり犬に多い皮膚病(食事が原因のもの)や、腎臓病、肝臓病などです。

ただし、療法食は基本的に獣医さんが処方しますので、自分の飼っているワンちゃんの具合が悪くなったら、まずは動物病院に行くことが大切です。

療法食については獣医さんの処方を必要とするという法的な縛りはないので、ネットでも買うことはできます。

しかし、素人判断は危険なのでお勧めできません。

たとえば、判断を誤って、減量が必要なワンちゃんに高栄養の療法食を与えてしまうと、かえって太ってしまいます。

間違った判断をしないためにも、獣医さんに診てもらって処方してもらうのがよいでしょう。

というのも、ワンちゃんの療法食というのは、非常に効果が高いからです。病気の種類によっては、素人判断を誤ってしまうと命にかかわる場合すらあります。

ワンちゃんの療法食は人間の薬に近いもので、効果が高い分だけ慎重な取り扱いが必要だと考えてください。

現在、動物病院に来るワンちゃんの3大疾病が皮膚病、尿石、肥満です。これに続くのが、心臓病や糖尿病、認知症、腎臓病など、人間と同じような病気です。

ワンちゃんの場合、これらの病気のすべてに療法食がありますが、一般の飼い主さんが自己責任で判断するのはかなり難しいと思います。

やはり、具合が悪くなったら獣医さんに診てもらい、療法食を処方してもらうのが原則でしょう。

ただ、獣医さんによっては療法食を使うよりも手術を優先させる人もいます。理由はさまざまですが、中には、療法食の効果をあまり知らない先生もいます。それというのも、ワンちゃんの療法食はここ10年ほどで急速に進歩したからです。

また、獣医さんには、療法食よりも手術のほうが経済的なメリットが大きいという人もいるようです。

手術より食事のほうが、飼い主さんとワンちゃんに与える負担は少ないでしょうから、こういう場合は動物病院を変えるのも一法かもしれません。

どういった治療を選択するのかも飼い主さんの自己責任というのが建前ですが、少なくても、ワンちゃんの療法食は効果が高いことだけは知っておいたほうがよいと思うのです。

橋長 誠司 ピーリンク顧問

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はしなが まさし / Masashi Hashinaga

30年以上にわたりペットフード流通の第一線で活躍。ペット業界の裏表を知り尽くした男。「ペットフードの日」の名づけ親。

1962年生まれ。大学を卒業後、共立商事(現在の共立製薬)に入社。MR(医薬情報担当者)として、動物病院に対する動物用医薬品(ワクチン、駆虫薬など)、食事療法食の営業に従事。その後、ユニ・チャーム、日本ヒルズなど国内外のメーカーでペットフードのマーケティングに携わる。

この間、国内のペットフードビジネスを盛り上げる目的で、ペットフード協会に対して「ペットフードの日」を提案。これが実り、現在、毎月20日がその日になっている。ドッグライフカウンセラーの資格を持ち、しつけを含め人と犬の生活を快適に送ることができるよう、ペットオーナーに対してもアドバイスを行っている。

現在は、ペット関連情報等の発信などを行っているピーリンクの顧問を務める。

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