「政府は堅く地方はゆるく」地方創生の本質 石破茂「試行錯誤は現場にしかできない」

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若新:しかも「コト」は「モノ」よりも圧倒的に低コスト。今の女子高生にとっては、商業ビルが建つことよりも、自分たちの意見が反映された「ちょっとしたもの」をつくってもらえるほうがうれしいのかもしれません。この考え方をもっと広めたい。

自分の「存在価値」を感じる場所

石破:最近は「移住女子」という言葉もはやっているそうですね。3.11を機に東京から地方に移住した女性の話を聞いたことがあるんですが、「東京は時間とおカネがないと楽しくない」という言葉が印象的でした。

若新:時間とおカネに余裕がある一部の人は、東京での生活を楽しめると思います。すべてが消費サービスに落とし込まれていますからね。人と出会うにも、おカネや条件が必要です。

そこまでおカネを使わなくても、いろんな出会いを楽しみながら、自分で納得のいく体験ができる場所をもっとつくる必要がある。それがこれからの地方の役割だと思います。

石破:逆に東京の疎外感が好きな人はそれでいいと思う。人によっては、地方の価値観が合わない人もいるだろうから。ちなみに私もできることなら、東京ではなく地方でのんびりしたい(笑)。

若新:僕は東京と福井とを行き来していますが、東京には大学やマスメディアなど都会ならではの仕事があり、福井には、生まれ育った場所で活動できる喜びがある。それに、都会だけでは、代替が利く人間が他にたくさんいますから、相対的に自分の存在価値が低くなってしまう。

石破:一方で、「ずっと東京のほうが心地よい」という人もいる。だから最終的に地方か東京の生活を選ぶのは、個々人の価値観で決めればいい。

若新:選択できる、ということが大事ですね。ただ、今都会に住んでいて自分の存在価値をあまり感じられない人には、ぜひ地方移住を検討してほしいと思います。稼ぎは減ったとしても、自分の能力を発揮できる機会に恵まれるはずです。

主観でかまわない。自分の存在価値を感じられるかどうかは、これからの時代における「成功」の重要指標になると思います。

最終的に地方か東京の生活を選ぶのは、個々人の価値観で決めればいい(撮影:梅谷秀司)
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