ブラック企業のトンデモな実態 放っておけない!若き弁護団が立ち上がったワケ

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――どう違ってきているのでしょうか。

成長大企業の中でも若い人たちを大量に採用し、労働基準法に違反するような過重労働によって、使い潰すような会社が出てきているのです。場合によっては過労死したり、うつ病になったりするような長時間労働や過重なノルマを、低賃金で強いて、入社まもない若者が次々と辞めていく。結果として、残った人たちだけで何とかする、というビジネスモデルになっている。過労死を生み出す原因の1つにブラック企業がある。

(弁護士として各社の)経営の詳しい中身まで言及するのは難しい面がありますが、低価格な商品やサービスを提供している企業ほど、ブラック企業と見られがちな傾向がある。人件費などの厳しい制約がある中で、どこかで帳尻を合わせなければならないからです。だから、若い人を無理に働かせる。

「ブラック企業は労働問題」と認識できていない

――そうした情勢を受けて、全国から約50人の若手弁護士が集まり、ブラック企業被害対策弁護団が立ち上がったワケですね。

弁護士の労働相談窓口としては、日本労働弁護団という組織があります。私も所属していますし、電話をはじめとして、多数の労働相談が寄せられています。ただし、若い人たちの間には、自身に起きていることが労働法違反に該当したり、弁護士に相談するような労働問題であったりするという認識ができていないケースがあります。

たとえば新卒で入社したばかりの若者だと、どれだけひどい働かせ方をさせられても、長時間働くのも、ノルマをこなせないのも、その結果、上司から強い叱責を受けても、すべて「自分の能力不足」「自分のせい」だとみずからを責めてしまうようなケースがある。若い人の労働環境が厳しい中、せっかく入社した会社を辞めてもほかに行くところがなく、会社に楯突いてどうなるのかというような思いもあるかもしれません。

そういう人たちに、ブラック企業があるということを知らしめ、「自分たちの働いている会社はブラック企業なんじゃないか」と認識してもらう、気付いてもらう1つのきっかけになれば、というのがブラック企業被害対策弁護団を立ち上げた狙いです。ブラック企業に該当するようなことがあれば、相談してもらって、場合によっては労働条件を変えるために、会社との団体交渉ができる労働組合との橋渡しをしたり、裁判を起こしたりします。

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