最速ポルシェを排したランボルギーニの実力 ルックスとスペックだけが派手じゃない

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ANIMAを「スポルト」に切り替えると、すべての反応が明らかにシャープになる。しかもこの「スポルト」、いわゆるドリフト状態に持ち込み易くすることを意図したモードでもあり、駆動力配分は40:60に設定されている。したがってコーナー脱出時には、スロットルワーク次第ではテールが今にも張り出しそうな気配を感じる。

一方、サーキットを速く安定して走るために設定された「コルサ」モードは、駆動力配分45:55。エンジンとシャシーのレスポンスは「スポルト」並みにシャープでありがら、「ストラーダ」同様にコーナー進入時も脱出時も基本的には安定したアンダーステアを維持するため、安心して速いペースをキープできる。

前記の「エアロ・ベクタリング」が作動するのが“「コルサ」モードの選択時だけ”という事実も、このモードに対する開発陣の本気振りをうかがわせる。

ALAの恩恵を実感する

このように走行モードによる違いはあるものの、いずれのモードをセレクトしていても、640psのミドエンジン・スーパースポーツをハイペースでサーキットに舞わせているわりには緊張感や恐怖感が希薄で、リラックスしてドライビングをエンジョイできたのは、ALAシステムが気流をコントロールしている恩恵に違いないと思う。

ALAがオフになって強力なダウンフォースを得られることで、ハードブレーキング時やコーナー脱出時の挙動が安定しているのに加えて、ストレートを加速する際などには、ALAがオンになって空気抵抗を減らしていることがスピードの伸びの鋭さを生み出している感触も、明確に感じとれた。つまり僕らは、ペルフォルマンテがノルトシュライフェで新記録を樹立した理由の一端を、実感できたわけである。

さらに最終スティントには、思い切って「スポルト」モードを選び、鋭角に左に曲がるTosa=トサコーナーからの脱出で、それまでよりも深めにスロットルを開いてみた。すると、マットなオレンジのペルフォルマンテはスムーズにテールをアウトに張り出したのち、今度は何事もなかったかのように姿勢を回復、V10 NAの爆音も高らかに加速していったのだから、嬉しくなった。

試乗の最後にはイモラ周辺の公道を走った。そこでは「ストラーダ」を選んでおけば乗り心地も充分許容の範囲にあり、排気音も適正なレベルに抑えられるから、なんの支障もなく市街地を流せることが実感できた。しかもALAの効果は70km/hから顕われるというから、公道上でもその恩恵に浴することは可能である。

ウラカン・ペルフォルマンテは僕にとっても、ランボルギーニのイメージを大きく変えてくれる、画期的な1台だった。しかも、サンタガタ・ボロネーゼのワークスで働くイタリアーノを中心とする開発スタッフが、稀代のスーパースポーツを生み出す仕事を心からエンジョイしている。それがなんとも素晴らしいことに思えた。

(文・吉田 匠)

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