トヨタ株主総会、章男社長が涙を見せたワケ 株主の心配は短期業績よりも中長期の競争力

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多くの質問が中長期のトヨタの競争力に関するものだった(記者撮影)

 トヨタに変革を迫るのは異業種の参入だ。

豊田社長は「かつて自動車メーカーの競争は1000万台の年間販売をどこが一番に達成するかだった。だが、今では独フォルクスワーゲン、米ゼネラルモーターズ(GM)、そしてトヨタも1000万台を達成した。1000万台を越えた後のペースメーカーは台数ではない」と語った。

その理由について、「今はライバルが増えている。(米国の電気自動車ベンチャーの)テスラや中国の自動車ベンチャー、さらにはグーグルやアップル、アマゾンなどの異業種も参入してきた。自動車の歴史をみると、過去はGMがずっと世界ナンバーワンでトヨタは存在していなかった。だが、今まさに80年前と同じことが起きている。ライバルはかつてのトヨタと同じかもしれない。競争相手やルールが大きく変わろうとしている」と危機感をあらわにした。

「世の中を良くしたい、情熱で誰にも負けない」

トヨタは今年創業80周年を迎える。トヨタのルーツは自動織機であり、「自動織機が車を作るとは当時だれも予想していなかった」(豊田社長)。だが、当時ベンチャーだったトヨタも今や1000万台を越える巨大企業になり、世界で業界トップ級に成長。逆に追われる立場に変わった。

 豊田社長はライバルに負けない姿勢も強調した。

「新たなライバルに共通するのは『世の中をもっと良くしたい』というベンチャー精神だ」と分析したうえで、「かつての私たちもそうであったように、どの業態が未来のモビリティを担うかわからない。ただ間違いなく言えるのは、次のモビリティを担うのに、世の中を良くしたいという情熱に勝るものはない。そういう意味でトヨタは誰にも負けない」と力説。

「自分たちの等身大の姿を真正面から見据え、徹底的に競争力を磨く。それは数値だけではない。いつの時代も未来を切り開くのは『世の中をもっと良くしたい』という情熱を持った人材だ。目には見えないが人材育成こそが勝敗を分ける」と話した。

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