急縮小した保険の銀行窓販は復活できるのか マイナス金利が直撃、外貨建てに切り替え

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縮小

銀行や証券会社の窓口で保険商品や投資信託を販売する、いわゆる「銀行窓販」で年金保険の扱いが可能になったのは2002年10月。その3年後の2005年12月には一時払い終身保険も解禁された。それから約15年が経過し、銀行窓販市場は年間4兆~6兆円規模(保険料ベース)に成長している。

しかし、銀行窓販市場はリーマンショックや金利の低下、為替の変動などによる浮き沈みが激しく、売れ筋商品も大きく入れ替わってきた。窓販市場における最大手、第一フロンティア生命保険の児玉憲一・業務企画グループ長は「窓販のスタート当初は円貨の変額保険、その後リーマンショックまでは円貨の定額保険が伸び、アベノミクス以降は外貨の変額保険、今は外貨の定額保険というように、数年おきに売れ筋商品が替わる変化の激しい市場だ」と話す。

この市場に参入した会社の中にも、旧・東京海上日動フィナンシャル生命保険やハートフォード生命保険など、変額保険の販売を大きく伸ばしたが、リーマンショック後の市場混乱に耐えられず、撤退する保険会社があった。

2017年度は各社とも看板商品を外貨建てに

窓販市場で近年激しいシェアトップ争いを続けているのが、第一生命グループの第一フロンティア生命と、MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上プライマリー生命保険の2社だ。フロンティアは外貨建て定額年金保険の「プレミアカレンシー・プラス2」、プライマリーは外貨建て定額終身保険「しあわせ、ずっと」という看板商品を掲げ、激しいトップシェア争いを繰り広げている。

両社の収入保険料は、2012年度以降、年率2~3ケタ増のハイペースで伸びていたが、2016年度は一転して、フロンティアは前期比47%減、プライマリーは同17%減と大きく落ち込んだ。しかし、前出の児玉氏は「保険は数ある金融商品の中の1つの手段にすぎない。円金利や銀行窓販の認知度次第で、まだまだ伸びる余地がある」と見る。2016年度の両社の収入保険料はフロンティアが9888億円、プライマリーは1兆0711億円で、2000億~3000億円程度しかなかった2010~2011年度と比べると数倍の規模だ。

また、「2017年度の商品動向はシンプルでわかりやすく、費用の見えやすい、オーソドックスな外貨建て商品に回帰する」(中堅保険会社幹部)という声もあがる。定額保険と変額保険を組み合わせた、いわゆる「2階建て」の商品が「仕組みが複雑」「手数料が高い」などという批判を金融庁から浴び、この商品を取り扱う金融機関の窓口で販売自粛の動きも出ているからだ。

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