あの北千住が「ヤンキーの街」を脱出したワケ 足立区は「大学の誘致」でブランド化を進める

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足立区は2000年以降、千住地区の小中学校の統廃合が進んだことにより、大学誘致による学校跡地の活用の検討を始めた。そして、2005年に、北千住地域を中心にした区の新たなまちづくりを標榜する「足立区文化産業・芸術新都心構想」を示す。

それ以降、東京電機大学、東京藝術大学、放送大学、帝京科学大学、東京未来大学と、立て続けに5大学の誘致に成功しており、2020年には花畑地区への文教大学の進出も決まっている。

街そのものを”子どもたちの未来を支える教育の場”へ

また、各大学の特色を生かした区との連携事業を通して、教育環境の充実、文化・芸術の振興、地元産業の活性化に取り組んでいるのも大きな特徴だ。東京藝大音楽部との連携では、演奏会、未就学児や小中学生を対象とした音楽教育支援活動や、文化教養講座が開催されている。

東京電機大キャンパスには、インキュベーションオフィスを設置し、新規創業支援を行っている。足立区は、北千住という街そのものを、”子どもたちの未来を支える教育の場”ととらえ、街に大学があるからこそできる取り組みを通じて、区の未来を担う人材を育成しようとしているのだ。こうした取り組みは、街のブランド力を押し上げる効果があることは言うまでもないだろう。

さらに、大学が集まれば、それは学生である若者が住み始めるということである。若者が集まれば街も変わることは当然だ。北千住駅前の丸井やルミネが、以前より活況を呈すことは容易に想像できるだろう。

それだけではない。長らく再投資が行われず、やや荒(すさ)んだ感じが漂い、近寄りがたい雰囲気すら感じられた駅周辺の飲み屋横丁にも、若者向けの居酒屋やカフェがオープンし始めている。昭和風情の古い街に、新しい店が混在するといった、ある種の猥雑(わいざつ)感、ごちゃごちゃ感がなんとも言えない魅力を生み、多様性のある面白い街に変貌しつつあるのだ。

さらに、足立区は若者だけでなく、子育て世代のニーズに応えることにも力を入れている。公立小・中学校の給食がおいしいと評判になっているのだ。足立区では出来たての食事を提供するために、自校調理方式を取り始めた。天然出し・薄味を基本とし、すべて食材から調理する。また、各校に配属された栄養士が、献立に工夫を凝らし、味付けや塩分量を管理するなど、子どもたちにおいしく給食を食べてもらおうと、さまざまな取り組みを行っている。

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