北朝鮮がICBMを開発すれば日米同盟は弱まる 現実味を帯びる「米国が日本を見捨てる日」

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米当局でも北朝鮮がICBMを保有するのは避けられないとの見方が強まっている。米国防総省の情報部門である国防情報局(DIA)局長のビンセント・スチュワート海兵隊中将は5月23日、北朝鮮が同月14日に高度2000キロメートル以上に到達した新型の地対地中長距離弾道ミサイル「火星12号」の試射に成功したことで、同国が米本土を直接とらえるICBMを保有する不可避な道筋にあると警告した。

では、北朝鮮が米本土を攻撃可能なICBMを保有すればどうなるか。

北朝鮮がICBMを持つと「日米同盟の力が弱まる」

この点をめぐり、今、軍事専門家や安全保障関係者の中で話題になっている記事がある。

米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)のジェラルド・ベーカー編集局長(55)が朝日新聞のインタビューに応じ、北朝鮮がICBMを保有した場合は「日米同盟の力が弱まる」との認識を示した。

5月22日付の朝日新聞の記事によると、同編集局長は北朝鮮がICBMを保有した場合、「サンフランシスコが核兵器で壊滅させられるかもしれないのに、米国が日本や韓国を防衛する見込みはまずない」と述べた。

日米の安全保障を揺るがす驚きの発言のように思えるが、これは米国の本音とみられる。

自国の安全保障が脅かされれば、他国の防衛より自国の防衛を優先するのはどこの国でも当たり前だ。特に北朝鮮がロサンゼルスやサンフランシスコ、さらにはワシントンやニューヨークといった大都市への核攻撃をちらつかせれば、米国の世論はこれを恐れる。そうなれば、米国は「核の傘」を含む拡大抑止力(同盟国への攻撃であっても自国への攻撃と見なして報復することを示すことで得られる抑止力)を同盟国の日本や韓国に提供できなくなるおそれが出てくる。そして、日本や韓国は米国の保護を受けられず、今以上に北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらされることになる。これは日米同盟や米韓同盟が機能不全に陥ることを意味する。

こうした懸念を表明するのは、WSJの編集局長だけではない。元朝日新聞社主筆の船橋洋一氏も、月刊『潮』7月号で、朝鮮半島をめぐる今後の戦略状況のパラダイムシフトの1つのシナリオとして、米国が日本と韓国への核の傘を事実上、差し伸べなくなる可能性を指摘している。

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