富士フイルムHD、「不正会計」の絶妙カラクリ 海外子会社で売り上げのカサ上げが行われた

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どうやって高く見積もっていたかというと、MARCOは毎月のリース料をプリンターの使用量に完全比例するように料金設定していたが、この使用量の見積もりを、実態よりも高く見積もっていた。その高く見積もった使用量をベースにした金額でリース債権をFINCOに譲渡し、リース開始時点でリース満了までの収入を一括で得ていた。

この手法だと、リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額に大きな差額が出る。これはリースが満了すれば、直ちに損失計上すべきものだ。

それなのにFINCOはこの差額を、未回収のリース債権としてバランスシートに計上していた。あたかも回収可能性があるかのように会計処理をすることで、損失を先送りしていたのである。

これはやはり「不正会計」

このケースはやはり「意図的に悪意をもって正しくない会計処理をしていた」といえるのではないか。実は、富士フイルムHDの過去分の決算修正はこれからだが、大手監査法人は不正会計を検証する前提ですでに修正作業に入っている。

なぜこうした不正会計が行われたのか。調査報告書はいくつかの原因を指摘している。

優良企業として知られる富士フイルムHD。しかしそのガバナンス体制に疑問符がついた(撮影:尾形文繁)

最大の原因はMARCOとFINCOの経営者が同一人物のニール・ウィッタカー氏だったことだ。同氏は現地採用でたたき上げの人物だったという。「料金は使った分だけ。使わなければ無料」を意味する「ミニマムペイメント(=固定費部分)なし」契約を始めたのは同氏だという。この顧客に有利な条件を武器に契約数を伸ばしたと見られる。

特殊な報酬体系も不正の温床となった。売り上げ増に対する評価部分が大きいことが、毎月のリース料を高く見積もることにつながった。ウィッタカー氏はFXNZでの実績が認められてオーストラリア子会社の経営トップに栄転している。そのオーストラリアでもニュージーランドと同様の不正会計がなされた。富士フイルムは同氏への損害賠償請求を検討しているという。

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