正社員妻の「離職」で起こる家計の大転換 「仕事辞めたい」と愚痴るくらいが丁度いい

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また、正社員として働き続けるうえで、定期収入がある以外の経済的メリットも知っておく必要があります。出産をする場合、産休期間には職場で加入している健康保険から、育休期間には雇用保険から、それぞれ給付金を受けられます。さらに、老後の生活にも余裕が出ます。あきらめずに働き続けた先で退職金をもらい、かつ厚生年金を老後に受け取ることの経済的アドバンテージも専業主婦(パートも含む)世帯とは比べものになりません。

もっとも、「金銭的なデメリットはよくわかったけれど、子どもが生まれたら仕事と両立するのは体力的・時間的にムリ」と思う女性もいるかもしれません。平成28年度版「男女共同参画白書」によれば、約6割の女性が第一子の出産を機に仕事を辞めています。

また、共働きをプッシュする女性向けメディアを見ると、しばしばスーパーウーマンが登場し、会社の役員をやりながら子育ても完璧にこなしている様子が描かれています。これを見たら、あなただけではなく、普通の女性であればみな「私にはムリ」と思うでしょう。

結婚を機に「キャリアか家庭か」の選択をしようとしたり、「キャリアも家庭も本気」のような完璧超人を目指そうとするから話は複雑になります。はっきり言ってしまえば、出世はあまり気にせず、仕事をほどほどに(でもまじめに)こなしながら、夫の協力を得ながら育児をして会社は辞めないことが正社員で働く女性のベターな選択なのです。

夫は妻の寿退職を全力で止めなくてはいけない

今度は、男性目線で同じテーマを考えてみます。男性は、結婚前に「寿退職」を希望する女性に対し、全力で止めにかからなければなりません。それがたとえ「でき婚(おめでた婚)」になったとしても、です。

女性の場合と同様、アラサーで合計所得が900万円のカップルを想定しましょう。これでかなり余裕がある生活が送れるのは前に述べたとおりです。

結婚退職を希望する女性が、結婚後も同じ生活水準を期待しているとしたら、それは不可能なことです。仕事のストレスから解放されても今度はおカネがないというストレスに悩まされることになります。そしてそのストレスは、夫たる男性、つまりあなたに向けられます。

子どもを持つとしたら、さらに家計は逼迫します。たとえば保育園に通っている子どもが1人いるとしたら、どんなに少なく見積もっても毎月数万円の食費や日用品代、そして数万円の保育料がかかります。内閣府の調査によれば、未就学児の年間子育て費用は年84.3万円。うち貯蓄等が19.9万円、レジャー・旅行費用が9.7万円のため、正味の子育て費用は50万円強となっています(「インターネットによる子育て費用に関する調査」)。子どもが増えたら、妻が会社を辞めるどころか年収を増やしたいくらいです。

子どものいる夫婦で、妻が仕事を辞めるということは、所得は下がり、出費は増える約22年間を今後に設定することにほかなりません。彼女がもし「落ち着いたらまた働く」と言っても、そもそも最初の10年ですら乗り越えるのは厳しいマネープランになるでしょう。

したがって、結婚前の男性に筆者がマネープランの観点から本音でアドバイスする機会があるのなら、「寿退職を認めることは男の優しさでも度量でもないので断れ」と言います。批判覚悟で言い換えれば「寿退職でなければ絶対に結婚しない、という相手とは縁がなかったと思って別の相手を探せ」と言ってもいいくらいです。

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