大林宣彦監督、新作撮影中「余命3カ月」の宣告 「命の自由を描くことに役立った」と話す

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佐賀県唐津市をイメージした映画「花筐(はなかたみ)」に大林宣彦監督がこめた思いとは(写真 : kattyan / PIXTA)

試写会で唐津ロケ秘話「映画人生集大成できた」

当記事は佐賀新聞LIVEの提供記事です

唐津市で映画「花筐(はなかたみ)」を撮影した大林宣彦監督(79)が6月3日、地元関係者向けの試写会に臨み、昨年8月のクランクイン直前に肺がんで余命半年の宣告を受けていたと明かした。「映画制作はいつも命懸けで遺書のつもり。今の段階で映画人生の一つの集大成ができた」と語った。

撮影開始の前日、肺がんがステージ4まで進行していて「余命半年」、撮影を敢行すると、3日後に「余命3カ月」との診断が下された。当初は唐津を離れ、東京の病院で診てもらう日もあったが、抗がん剤が効き、驚異的に回復。現場と唐津赤十字病院を行き来し、ロケを続けた。

地元関係者向けの試写会後、取材に応じる大林宣彦監督。奥は映画のポスター=唐津市南城内の大手口センタービル

映画は平和の尊さが込められた日米開戦直前の青春群像劇で、自分らしく生き、自分らしく死にたいと願う男女を描いている。物語と自身を重ね合わせ、「命の自由を描くことに大いに役立った」と闘病をプラス思考で捉え、「この映画の精神によって私は生かされている」とも。治療は現在も続いているという。

原作は檀一雄が唐津をイメージして書いた同名の短編小説で、監督自身が40年前にデビュー作にと温めていた脚本を書き直した。積年の思い、捨て身の覚悟で挑んだ熱量が2時間40分にこもっている。長いキャリアを踏まえ、大林監督は「過去に何度か、作った映画が映画を超えて事件になったときがある。見た人が好き、嫌いではなく、『えらいもの見た』と。久々に事件をつくった感じがする」とも静かに語った。

映画製作推進委員会の辻幸徳会長(68)は「自分たちでふるさとの文化を守る唐津くんちが生の象徴として、死の象徴である戦争と対比して描かれている。こんなにいい祭りや風景が地元にあると、胸を張って見ていただきたい」と市民にPR。目標額を上回る1億200万円の寄付金が集まったとの報告もあった。

12月上旬に唐津で先行上映会を開催。同月中旬から東京・有楽町スバル座を皮切りに全国で上映される。

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