どれが吸われる?バカ売れ「IQOS」に挑む2強 受動喫煙論争よそに膨らむ加熱式たばこ市場

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ちなみに名称について、報道などでは従来、「加熱式たばこ」と表現されている。が、筆者が考えるには、加熱のみだとグリセリンなどを含む水蒸気のイメージが湧かないので、「スチーム式たばこ」というほうが近いかもしれない。

JTが6月29日に銀座でオープンする「プルーム・テック」の専門店。世界観を表しているという(写真:JT提供)

加熱式たばこの場合、専用たばこの値段は、IQOSとプルーム・テックが1箱各460円、グローが同420円で、今ある紙巻きたばことさほど変わらない。ただし、本体が精密電子機器であるため、どうしても初期投資は高くなる。IQOSは1万0980円、プルーム・テックは4000円、グローは8000円だ(各社公式HPより。別途キャンペーン価格などもある)。

勝敗は立ち上がり時の顧客取り込み

勝敗を分ける決め手は、市場立ち上がり時を逃さず、いかに顧客を取り込めるかだ。先行者メリットのあるIQOSは有利だろう。もっとも、旧日本専売公社の広範な販売網を持ち、かつ本体価格も安い、JTのプルーム・テックも侮れない。グローも本体を充電せずに済むといった利点がある。

従来の単なる消耗品から、たばこと”機器”とを組み合わせた新たなビジネスモデルへと変貌させる、加熱式たばこ。嫌煙・分煙化の流れと相まって、たばこをめぐる環境を激変させるのは間違いない。

*本記事はたばこやパイプたばこなどの推奨や宣伝をする目的はまったくなく、商品分析のために書かれたものです。たばこは人体に有害とされているため、推奨されるものではありません。厚生労働省の方針も現時点でのものであります。

山本 康博 ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役、ブランドマーケッター

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やまもと やすひろ / Yasuhiro Yamamoto

1965年生まれ。日本コカ・コーラ、JT、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本製作。1年以上継続した商品を計算すると打率3割3分、マーケティング実績30年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、英語著書『Stick Out~a ninja in Japanese brandmarketer~』(BVC)など。

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