新規事業がイケてない会社にありがちな忖度 社長の意図を酌み取ろうとしても難しい

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ところが、専門組織を設置してから半年が過ぎても、社長が期待したような新規事業の起案がなかなか上がってきません。さまざまな事業案が毎月の会議で議題に上がるものの、社長にはどれもピンと来ません。

社長は、この状況にして社員にはまだ危機感が薄いように思えて、「もっとしっかり考えろ!」と檄を飛ばします。社員から上がってくる事業案は社長にとっては面白みに欠け、「やはり、センスの問題か……」と憂えています。自らヒット商品のアイデアを生んできた身としては、「やはりここは自分が自らアイデアを出してなんとかしないと……」と焦るのですが、最近はアイデアを閃(ひらめ)くことがなく、ひとり悶々としています。

一方で、自分がこの会社を引っ張ってきたという自負はあるものの、自分ももうそこそこの年齢だし、世の中のトレンドからズレてきてしまっているかもしれないし、自分の過去の成功体験に縛られているとしたらまずい。若い社員に既存の枠組みにとらわれず自由な発想で取り組んでもらい、会社を次のステージに上げていきたい、という思いもあります。

「誰か起業家精神をもった社員はいないのか、正面から俺に直接自分の事業案をぶつけてくるくらいの心意気を持ったやつはいないのか」と嘆く毎日です。

創業家社長に仕える管理職の悩み

一方で専門組織のリーダー役を担うことになった部長も頭を抱えています。これまで管理部門の部長を務めていましたが、自分で新規事業を考えるような経験はありません。ただ社長から「社員から新規事業のアイデアを募り、筋のよさそうなものを案にまとめて上げてこい」と指示されたものの、どんな進め方をすればいいのかよくわかりません。

この半年間、社長を含め関係者が集まって月に1回戦略会議を行ってきました。部署の発足直後から部長は周囲のキーマンに働きかけ、新規事業の案を募りました。声がかかった社員は意気に感じ、日頃から考えていたアイデアをプランにまとめ部長に託しました。

さすが部長が自ら直接声をかけた社員だけあって、なかなか魅力的なアイデアが集まりました。すぐにでも手をつけるとよさそうな案もあります。部長は、これは社長にも喜んでもらえそうだと、集まった案を戦略会議に持ち込みました。

会議での社長の評価はさんざんでした。

「こんなものは既存事業の延長線上にすぎない。なんのためにわざわざ専門部署を作ったと思っているんだ!」とお怒りです。

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