日本人が海外投信に香港経由で投資する方法 回転売買が批判される日本の投信と違う選択

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また、2018年からスタートする「積立NISA」の対象として、金融庁が「ノーロード(販売手数料ゼロ)で信託報酬が一定以下の商品」という条件を付けたところ、日本で販売されている公募型投信5406本中、その条件に合致したのはたったの50本以下だったことも明らかになった。

日本の投資信託がいかに、金融機関側の都合で作られているかがわかる。実際に、日本の投資信託は運用効率を低下させる「毎月分配型」といったタイプの商品が多く、しかも購入時には販売手数料として2~3%徴収され、運用期間中も運用手数料として信託報酬が3%前後徴収されるのは常識。要するに、初年度だけで6%を超える手数料が徴収され、5年間預けておくだけで2割程度の手数料が取られる。5年間で2割を超す運用益があればいいが、現在の運用状況ではまず可能性が低い。

しかも、銀行も証券会社も「全社キャンペーン」を展開して、新たに設定された投資信託をつねに販売する。その結果、手持ちの投資信託が儲かっていれば利益確定を勧められて新商品に買い替えさせられ、損をしていれば損切りを勧められて新商品に転換させられる。いわゆる「回転売買」が横行して、顧客の資産は目減りしていく一方だ。

債券ファンドでも年率9%の運用益?

こうした投資信託ビジネスは日本特有のものだ。一方、NWBが販売している投資信託は米国など、世界中で販売されている投資信託がそのまま販売されている。香港は、グローバルスタンダードな金融市場になっており、日本のように海外の投資信託はすべて日本語に訳した目論見書や運用報告書などを用意するためのコストがかからず、米国や欧州で設定された投資信託がそのまま販売されている。

実際に、NWBの「ファンドリスト」をみれば、運用成績がわかる。過去5年間のトータルリターンをチェックしてみると、年率換算で10%以上の運用益を上げているファンドが数多くある。債券ファンドでも年率9%の商品が存在する。

たとえば、米国の機関投資家すべてが組み込んでいると言われるファンドなど、NWBのような個人投資家を対象としている銀行で扱われているのは日本ではなかなか考えられないような運用成績を上げているファンドばかりだ。

最低1000ドル以上の残高で口座維持手数料は不要

さて、そんなNWBの新サービスだが、気になるのはやはり手数料などのコストだろう。10万米ドルといった海外口座特有の最低預入金額が必要なくなったとはいえ、たとえば「口座維持手数料」は必要になる。

NWBの規定では、口座残高が1000米ドル未満であれば月額250香港ドル(3500円程度)。11万円を超える金額の投資信託やMMFを購入しておけば、口座維持手数料がかからない。

この他、口座に入金する場合の海外送金手数料や、外国為替に両替する場合の為替手数料などがかかってくる。海外口座を開設することのメリット、デメリットなどについては省略するが、これまで国内の金融機関によって、資産運用の成果を上げられない投資信託で損ばかりしてきた投資家にとって、「eNWB」サービスは選択肢の1つになるかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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