おカネは「人生100年時代」にいくら必要か 日本の人口減少に悲観的になる必要はない

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資産の価格は、資産が将来生むと予想される経済価値を「現在価値」として割り引くことによって形成される。

大まかに言って、企業に高成長が予想される場合には、将来の経済価値に対する高い予想を反映して、現在の時点で高い株価が付く。逆に、低成長が予想される場合、それを反映して現時点の株価が低く付くのだから、予想が正しい場合、「成長率予想の高低」ではなく、「割引率」が投資のリターンを決める。

投資リターンは予想よりも上振れすれば高くなる

リターンの大小にとって真に問題なのは、成長率が「予想されていたよりも高いか・低いか」であり、より現実に即して言うと、「新しい予想が前の予想よりも上ブレするか・下ブレするか」である。

いわゆる「失われた20年」の日本株の冴えない動きは、見通しの「下ブレ」の連続がかなりこたえたものだった。

大まかな資産価格決定の仕組みを図にしておいたので、図を見て納得していただきたい。仮に日本の経済と企業収益が低成長だとしても、それが現時点で予想されていて、株価に反映しているなら、日本株への投資は十分に儲かっておかしくない。

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人口減少に話を戻すが、現在、人口減少による成長率低下を心配する声がある一方で、AIやロボットが人間の職を奪うことを心配する声もある。ともかく、人間は心配すると「声」に出るものなのかもしれないが、省力化につながる技術の進歩と人口の減少がうまく噛み合うと、日本は大変居心地のいい時代を迎えることができるかもしれない。社会として大事なのは、技術とそのための教育投資、そして、社会的な保険としての分配論だ。

尚、AIやロボットの将来性には大いに期待しているのだが、「AI」に特化した株式の投資信託に投資することは、お勧めしない。投信の歴史を振り返っても、「テーマ・ファンド」は成功例が少ないし、現在売られている商品は手数料が高すぎて話にならない。銀行や証券会社の窓口で、勧められたという話をちらほら聞くので、ご忠告しておく。

ほかの国よりも早く、高齢化と人口減少が進む日本は、「課題先進国」(半ばヤケクソの言い方だが)であり、来るべき社会の先端的実験場でもある。筆者は、日本経済と日本の居心地について、すばらしく楽観的な訳ではないが、特段悲観はしていない。

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