「カタール断交」は空の便に巨大影響を与える 飛行制限で中東系エアラインに異変も

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改めてカタール航空とはどんな会社なのか。簡単に説明してみよう。

カタール航空A380の上層階にあるファーストクラス。ゆったりしたスペースに驚かされる(パリ航空ショー2015にて、筆者撮影)

社史を見ると、創業は1993年と比較的新しい。当初はエアバス「A310」2機を使い、周辺国へのフライトを飛ばしていたが、1995年にANAが使っていたボーイング「747」2機を導入するなどして業容を拡大。現在は、2階建ての「A380」をはじめ、「787ドリームライナー」を使用しているほか、2015年には「A350」を世界で初めて営業路線に投入している。つまり世界でも有数の新鋭機をそろえた航空会社と言えるだろう。

就航都市は、周辺国との断交直前の時点で150を超えていた。カタールの首都・ドーハとニュージーランドのオークランドを結ぶ便は現時点で世界最長距離を飛ぶフライトで、約1万4500キロメートルを17時間30分余りかけて飛ぶ。そのほか、米国西海岸のロサンゼルスやサンフランシスコへの直行フライトもあり、いずれも16時間近い長丁場となる。

日本へは目下、成田と羽田に乗り入れている。東京への便に先立つ2005年に関西空港便が就航したが、2016年3月末をもって同区間は運休となった。「西日本からトルコやエジプト、そして欧州各地に行くのに便利」と好評だっただけになくなってしまったのが惜しまれる。

周辺国の空域からの締め出しが大きな痛手

中東は地理的に見て、欧州とアジア・オセアニアの中間に当たることから、旅客や貨物の中継地点としての存在意義がますます高まっている。

カタール航空A380の上層階には、上級クラス乗客のためのバーカウンターが設けられている(パリ航空ショー2015にて、筆者撮影)

カタール航空をはじめ、UAEのエミレーツ航空、エティハド航空といった中東系航空会社が積極的にネットワークを広げたおかげで、日本から欧州に安価で行けるようになったほか、アフリカへの旅行が身近になった。さらに南米に向かうのに中東経由というルートも開拓されている。2階建て超大型機「A380」に乗れるのも中東系航空会社の楽しみといえるだろう。シャワーがあったり、個室対応だったりといった超豪華仕様の上級クラスも話題になっている。

ところがカタール航空は、周辺国との断交を受け、最適ルートを飛ぶことができなくなった。飛行ルートをチェックできるサイトを見ると、カタールからイランを結ぶ経路上に、同社の飛行機がびっちり並んで飛んでいるのがわかる。どこに向かうにも、このルートを通ってアラビア半島から離れて行くしかないからだ。

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