英総選挙、与党保守党がまさかの過半数割れ 労働党「メイ首相は有権者の信頼を失った」

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 6月8日、英総選挙(下院、定数650)は8日実施され、投票終了後に明らかになった出口調査によると、与党・保守党は過半数には届かない見込み。写真は集計作業(2017年 ロイター/Paul Childs)

[ロンドン 9日 ロイター] - 英総選挙(下院、定数650)は8日、投票が締め切られ、これまでの開票結果によると、メイ首相率いる与党・保守党が第1党の座を維持するものの過半数に達しないことが確実となった。どの政党も過半数に届かない「ハングパーラメント(宙づり議会)」状態が生じることになる。

保守党は330議席から大幅に減少

メイ首相は欧州連合(EU)離脱交渉を前に政権基盤を強化するため総選挙の前倒しに踏み切ったが、有権者の支持は得られず、改選前(330)から議席を減らす。

650議席中643議席が確定した段階で、保守党の議席は313となり、過半数である326議席に届かないことが確実となった。労働党は260議席。

首相は9日、英国には安定が必要だとし、保守党が第1党となる場合は安定をもたらす責任を自身が引き受ける考えを表明。一方、最大野党労働党のコービン党首は、メイ首相は有権者の信頼を失ったとして、辞任すべきとの考えを示した。

EU離脱交渉の開始を目前に控え、次期政権の構成や離脱交渉の基本的な方向性などを巡り、不透明感が強まってきた。

メイ首相は自身の当選が決まった後、「現在、英国が何よりも必要なのは安定した期間だ」と発言。「予測が示す通りに保守党が最大議席と恐らく最多票を獲得する場合、われわれにはその安定期間をもたらす責務があり、そうする考えだ」と述べた。

一方コービン党首は、今回の総選挙はメイ首相が基盤を強化するために解散したことに伴うものだったと指摘。「メイ首相は与党・保守党の議席を減らし、信頼を失った。辞任の十分な理由となる」と述べた。

今回の選挙結果を受け、英国の離脱交渉を巡るEUとの協議の開始が遅れる可能性が生じ、交渉が失敗するリスクが高まった。

EUの執行機関である欧州委員会のエッティンガー委員(財政担当)は「行動できる政府が必要だ」と発言。交渉相手の立場が弱ければ、結果も不調になりかねないと語った。

保守党が過半数に届かない見込みとなったことを受けて、ポンドは下落している。

オアンダ(ロンドン)のアナリスト、クレイグ・アーラム氏は「ハングパーラメントは市場にとって最悪の結果だ。EU離脱交渉を控えて再び不透明感が強まり、英国にとって合意を確保する既に短い時間がさらに削られるからだ」と指摘した。

小規模政党は保守党よりも労働党寄りの政党が多いため、コービン党首が首相に就任する可能性も非現実的な空想ではなくなってきた。

もしそうなれば、EU離脱交渉の行方はさらに予想が難しくなる。

ただ、保守党の獲得議席が実際に過半数に届かなかった場合、保守党は北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)と連立を組む可能性はある。

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