USJ躍進担う「必然的に選ばれる戦略」の本質 マーケター森岡氏が「確率論」の考えを明かす

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「『自分は今日プリファレンスを上げたかな』とか、『何人お客を増やしたかな』と思いながら、毎日仕事をしてます?」。私がユー・エス・ジェイに入ったとき、最初にそんな趣旨の質問を社内に投げてみた。みんなきょとんとして、変人が来た、と思われた(笑)。

リーダーシップなき分析は無価値である

ユー・エス・ジェイが社運を懸けて成功させた「ハリー・ポッター」のプロジェクトも、この確率思考が基盤になっている。USJがV字復活するには、選ばれるサイコロの目を現時点のXからX‘(エックスダッシュ)まで大幅に引き上げる必要があった。そう、あらかじめ目的を設定したうえで、このギャップを十分埋められる強力なブランドはいったい何なのかを逆算し分析していった。

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答えは地球上に2つしかないとわかった。1つは名前を言えないが、日本発の世界的ブランド。両方ともS級難度の交渉が必要な中、何としても2つのうち1つは獲得しようと必死になり、何とか「ハリー・ポッター」を造れることになったが、そこから金融機関を説得し、実行するのが本当に大変だった。

最近はやりの「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」が、私は嫌いだ。そういう言葉には目的達成よりも、分析ありきという響きが感じられる。私にとって、そういうのは価値がない。

真の分析とは、リーダーシップを伴うものだ。誰に何をインフルエンス(影響)させたくて分析しているかが、つねに頭に入っている。「上司から言われただけ」とか、「同じ分析ばかりで飽きる」と愚痴る人は、データ分析とは似て非なるものをしている。

事業本部長を説得し、社長も賛同させ、戦略に影響を与えたくて作ったリポートと、のべつまくなしに命じられて作ったリポートとでは、クオリティが全然違ってくる。よい分析には「魂」が入っていなくてはならない。あまり科学的ではない言葉だが。(談)

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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